2025年6月23日 (月)

『ドールハウス』のバカバカしさ

矢口史靖監督の『ドールハウス』を劇場で見た。この監督はこれまで『ウォーターボーイズ』(2001)や『スウィング・ガールズ』(2004)、『ハッピー・フライト』(2008)など、とにかくたっぷり楽しませてくれた。

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2025年6月21日 (土)

家庭用の紙フィルムとは

「紙フィルム」という言葉を聞いた時、私はすぐにワシントンの議会図書館が所蔵するペーパー・プリント・コレクション」のことかと思った。これは映画が生まれた頃まだフィルムに著作権がなかった時に、エジソンが映画を紙に転写して収めたものだ。このおかげで映画初期の多くの作品を現在でも見ることができる。

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2025年6月19日 (木)

『ミッション:インポッシブル』の没入感?

トム・クルーズ主演の『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』を劇場で見た。一番思ったのは、最近大学生がよく口にする「没入感」という言葉だった。これはどうも彼らにとって、映画を見る時の最大のポイントのようだ。

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2025年6月17日 (火)

今さら映画の入門書?:その(2)

『映画技術入門』で出色なのは、前に書いたように有名な作品の技術的データが書かれていること。例えば「16㎜で撮られた主な作品」のリストがある。カサヴェテスの『アメリカの影』(1959)やヴェンダースの『都会の夏』(1970)、ユスターシュの『ママと娼婦』(1973)、ジャームッシュの『パーマネント・バケーション』のように初長編が多い。

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2025年6月15日 (日)

『燈台守』と『迷宮の女』

先日、グレミヨンの『父帰らず』(1930年)を見たのは、シネマヴェーラの「ジャン・グレミヨン&ジャック・ベッケル特集」だったが、またグレミヨンを見にいった。行く前に調べて驚いたのは、この2人の監督の多くがアマゾン・プライムやユーネクストで見られること。

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2025年6月13日 (金)

『国宝』に考える

李相日監督の『国宝』を劇場で見た。これは「朝日」に連載していた頃から楽しみに読んでいたので、李監督の手で映画化されると聞いて嬉しかった。結果から言うと抜群におもしろかったが、少し不満も残った。

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2025年6月11日 (水)

鳥取県立美術館に行く

神戸への学会出張を利用して、鳥取へ出かけた。開館したばかりの鳥取県立美術館に行くためだ。ここの館長・尾崎信一郎さんは私と同じ歳で、20代後半に一度だけ一緒に仕事をしたことがあった。彼が兵庫県立近代美術館に勤めていた頃で、ローマとダームシュタット(フランクフルト郊外)巡回の「具体」の展覧会。

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2025年6月 9日 (月)

40年ぶりの『父帰らず』

ジャン・グレミヨン監督の『父帰らず』(1930)をシネマヴェーラで見た。たぶん最初に見たのは1985年にパリのシネマテークだったから、実に40年ぶりである。当時、各国のトーキー初期作品に興味があって、これは実におもしろかった。

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2025年6月 7日 (土)

サン美と都写美散歩

サントリー美術館で15日まで開催の『酒吞童子 ビギンズ』展を見た。これは同館が所蔵する重要文化財・狩野元信筆《酒吞童子絵巻》(1522)が解体修理を終えて公開されるのを機会に、そのほかの酒吞童子関連の絵巻を見せるというもの。

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2025年6月 5日 (木)

『雪どけのあと』にこもる熱い思い

6月14日公開の台湾のドキュメンタリー『雪どけのあと』をDVDの試写で見た。1996年生まれの女性監督、ルオ・イシャンの第一回長編というが、20代初めのとびきりつらい出来事を映像にすることで克服したような、熱い思いがじかに伝わってきた。

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2025年6月 3日 (火)

『ヌーヴェル・ヴァーグ』という本を出す:その(2)

集英社新書から『ヌーヴェル・ヴァーグ 世界の映画を変えた革命』を出してから、一カ月あまりたった。残念ながら、まだ増刷の話はない。勇気を出して編集者に売れ行きを聞くと、2年前に同じ版元から出した『永遠の映画大国 イタリア名画120年史』とほぼ同じらしい。

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2025年6月 1日 (日)

『メイデン』の柔らかな風景

カナダのグラハム・フォイ監督の第一回長編『メイデン』を劇場で見て驚いた。1987年生まれで初長編というが、相当の才能の持ち主だ。明らかに16㎜で捉えられた荒い映像とざわめきの音が、10代の少年少女が全身で感じる世界を表現する。

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2025年5月29日 (木)

『サブスタンス』は面白いか

フランスのコラリー・ファルジャ監督がデミ・ムーアを主演に撮った映画『サブスタンス』を劇場で見た。予告編でかなりグロテスクな感じがあったので、半分は怖いもの見たさ。去年のカンヌの脚本賞というのも興味があった。

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2025年5月27日 (火)

今さら映画の入門書?:その(1)

「映画」と「入門」という2つの言葉が入った分厚い本を2冊読んだ。昨年出た高良和秀編著『映画技術入門』と一昨年出たパオロ・ケルキ・ウザイ著、石原香絵訳『無声映画入門 調査・研究、キュレーターシップ』。大学で16年も教えてきたのに今さら映画の入門書とはと思われるかもしれないが、私にはどちらもおもしろかった。

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2025年5月25日 (日)

『愛よ人類と共にあれ』の241分

だいぶ前に国立映画アーカイブで見た島津保次郎監督の『愛よ人類と共にあれ』(1931年)について書いておきたい。サイレント作品で上映時間は241分=4時間強。同じ1931年から翌年にかけて公開された清水宏の『七つの海』も同じくらいの長さだから、サイレント末期の蒲田撮影所では大河ドラマの長尺ものが流行っていたのか。

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2025年5月23日 (金)

新書は微妙:その(1)

いつの間にかこの5年のうちに新書を3冊書いた。10万字、13万字、15万字と少しづつ厚くなったが、どれも書くのに半年強であまり時間がかからなかった。長年新聞社に勤めて、大学に移ってからも短い文章を新聞や雑誌や映画パンフに書いていたから、いわゆる研究書や論文を書くよりも新書は私には向いているかも。

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2025年5月21日 (水)

『太陽の運命』は必見

佐古忠彦監督のドキュメンタリー『太陽(ティダ)の運命』を劇場で見た。この監督は『米軍が最も恐れた男 その名はカメジロー』(2017)を見て強く心を動かされた。TBSの監督だから今回も映画のトーンはテレビ調なのだが、それでもTBSと系列の琉球放送(RBC)が持つ映像を駆使して語られる沖縄の現代史に文字通り圧倒された。

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2025年5月19日 (月)

長い映画:その(1)『トレンケ・ラウケン』と『青春』

アルゼンチンのラウラ・シタレラ監督『トレンケ・ラウケン』を劇場で見た。題名からして訳がわからないし(実は映画に出てくる地名)、二部に分かれて計4時間20分。冒頭に2人の中年男が出てくる。面識がないようだが「ラウラを一緒に探そう」。2人の間には妙な雰囲気が漂う。

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2025年5月17日 (土)

現美の岡崎乾二郎展など

東京都現代美術館で「岡崎乾二郎 而今而後 ジコンジゴ」展を見た。岡崎乾二郎氏は、私が現代美術を見始めた1980年代後半には既に有名だった。当時ベネチア・ビエンナーレなど海外に出始めた若手の作家たちより少し年上で、何より弁の立つ理論家という印象があった。

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2025年5月15日 (木)

『イッツ・ノット・ミー』に当惑

レオス・カラックス監督の『IT'S NOT ME イッツ・ノット・ミー』を劇場で見た。42分しかなく、これでシニア料金1200円は高いと思ったが、カラックスがゴダール風の作品を作ったというので見たくなった。

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2025年5月13日 (火)

25年目のイタリア映画祭:その(3)

イタリア映画祭は、開催時期、場所、規模(本数)など私が2001年の始めた時からほとんど変わっていない。ついでに言えばチラシやパンフのデザイナーや判型、印刷会社まで同じ。作品選択のテイストまで私が選んでいた時とかなり似ている気がする。

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2025年5月11日 (日)

アーティゾン美術館のアルプ夫妻と硲伊之助

アーティゾン美術館は、今一番いい時間を過ごせる都心のスポットではないだろうか。銀座や日本橋に近い場所に広めの空間が3フロアーあって、おおむね5、6階が企画展で4階が常設で、見終わるといつも深い充実感を味わう。

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2025年5月 9日 (金)

25年目のイタリア映画祭:その(2)

もうイタリア映画祭はとっくに終わったが、メモとして書いておきたい。マルコ・トゥッリオ・ジョルダーナ監督は、『ペッピーノの百歩』(2000)と『輝ける青春』(2003)がとにかくすばらしかった。前者は2001年の第一回のイタリア映画祭の初日の夜に上映された「オープニング作品」だった。

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2025年5月 7日 (水)

『エリック・ロメール』を読む:その(1)

アントワーヌ・ド・ベック&ノエル・エルプ『エリック・ロメール ある映画作家の生涯』を読んだ。実は4月17日刊の拙著『ヌーヴェル・ヴァーグ 世界の映画を変えた革命』で2度引用しているが、最初は仏語の原著を自分で訳していた。ところが去年の12月に翻訳が出たのを知り、3月の再校の段階でそちらからの引用にした。

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2025年5月 5日 (月)

わからないシリーズ:その(6)『ミッキー17』と『シンシン』

少し前になるが、ポン・ジュノ監督の『ミッキー17』を劇場で見た。彼がアメリカで作った『スノーピアサー』や『オクジャ』が私には母国で撮った『グエムル』などに比べてどこか絵空事に見えたので、どうしようかと思っていたが、予告編で見たくなった。

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2025年5月 3日 (土)

25年目のイタリア映画祭:その(1)

イタリア映画祭が25年目という。私が2001年に始めた映画祭だが、こんなに続くとは思わなかった。「私が始めた」と書いたのは誇張ではない。イタリア大使館から、2001年に「イタリア年」をやるので美術、音楽、映像などの企画を出して欲しいと言われたのが、その2年以上前だったと思う。

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2025年5月 1日 (木)

わからないシリーズ:その(5)現代美術

森美術館の片岡真美館長の講演を聞く機会があった。かつて長年、展覧会屋(ランカイ屋)をやっていたので、行政出身でない館長クラスは知り合いが多い。というか、若い頃に個性的な活動をしていた美術館学芸員は、だいたい大学教授か館長になっている。

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2025年4月29日 (火)

『季節はこのまま』に流れる時間

5月9日公開のオリヴィエ・アサイヤス監督『季節はこのまま』をオンラインの試写で見た。いわゆる「コロナ禍」の外出禁止令の時期を描いた映画という意味では、1週間前に公開されたロウ・イエの『未完成の映画』と同じだが、雰囲気は全く違う。

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2025年4月27日 (日)

『日ソ戦争』に驚く

買っておいた麻田雅文著の新書『日ソ戦争』をようやく読んだ。オビに加藤陽子、小泉悠の両氏絶賛だし、去年の新書大賞2位という。そもそも「日ソ戦争」というのは何か。「第二次世界大戦末期にソ連がドサクサに紛れて参戦した」くらいに思っていたが、とんでもなかった。

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2025年4月25日 (金)

『新世紀ロマンティックス』の謎のリサイクル

5月9日公開のジャ・ジャンクー監督『新世紀ロマンティクス』を試写で見た。最近の作品は、『山河ノスタルジア』(2015)も『帰れない二人』(2018)も20年ほどの中国の激変を生きる男女を描いたもので、強い感銘を受けた。

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