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2009年5月 8日 (金)

「バーダー・マインホフ 理想の果てに」

ドイツ赤軍を扱った、今夏公開予定のドイツ映画を見た。今年のアカデミー賞外国語映画賞部門で6本の最終ノミネートに残った作品だ。1960年代からの学生運動が70年代にテロ活動に変わり、社会を大きな不安に陥れた現象がドイツにもあったんだ、というのが最初の感想だ。日本の「実録 連合赤軍」やイタリアの「夜よこんにちは」「輝ける青春」など、最近はこの時代を扱った映画が多い。しかしドイツ赤軍については、イタリアの赤い旅団ほどにも知らなかった。
映画は史実に正確に、ジャーナリスト出身の女性、マインホフと活動家のバーダーが出会い、次第にテロ活動に従事し、投獄されて死ぬまでを描く。フィクションを加えることをしていないため、時にテロが残酷すぎたり、主人公たちが物語の真ん中近くで投獄されたまま話が続いたり、映画として劇的な構成に欠けることはあるかもしれない。しかしその分をニュース映像などで補い、最後まで緊張感のある画面を生み出している。特に学生たちの集会やデモのシーンなど、何千人というエキストラを使った場面は迫力に満ちている。
脚本、製作はベルント・アイヒンガーで、「ヒトラー 最期の12日間」と全く同じ。現代人が何を見たいか、どう料理したらいいかを正確に知っている、相当センスのいい映画人に違いない。監督よりプロデューサーの映画と言うべきだろう。
俳優たちが良かった。特にマルティナ・ゲデックが素晴らしい。「素粒子」の時もそうだったが、この女優は、知的な女性が苦しんで壊れてゆくさまを演じたらドイツ一だろう。もちろんモーリッツ・ブライトロイは直情的で神経質だが憎めない役柄がぴったりだ。ほかにも「ヒトラー」のアレクサンドラ・マリア・ララや「4分間のピアニスト」のハンナ・ヘルツシュプルンクなど、これまでいろいろなドイツ映画で見た若手俳優たちが、脇役、端役で多数登場している。そういえばブルーノ・ガンツは穏健派の警察庁長官だが、その手下を「ヒトラー」のお抱え建築家シュペア役のハイノ・フェルヒが演じていると、まるで「ヒトラー」の一シーンみたいでおかしいが。
いずれにしてもアカデミー賞を取ってしまった「おくりびと」より何倍もおもしろい映画だ。日本の左翼と違って内ゲバがないのも興味深い。全共闘世代が見たらどう思うか、ぜひ知りたい。

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