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2009年6月20日 (土)

東京の下町

下町という言葉の定義は意外に難しいので置いておくが、東京の古い町並みを撮った映画を2本試写で見た。
緒方明監督の『のんちゃんのり弁』は、墨田区京島のあたりが舞台で、夫がいやになり子供を連れて実家に帰ってきた31歳の女性が主人公。いかにも下町らしい人情味あふれる街で、ストレートに自分の今後の行き方を追求する女性を尾西真奈美が演じていて、気持のいい映画だ。あちこちに庭や緑の植え込みがある一戸建てが並ぶ街を丁寧に撮る笠松則通のキャメラも心地よい。特に岸辺一徳が主人を演じる居酒屋「ととや」のシーンが美しい。日本料理がこれほどおいしそうに見える映画を久しぶりに見た。もちろん「のり弁」もうまそうだ。9月末にスバル座ほか公開。
是枝裕和監督の「空気人形」は、いわゆるビニールのダッチワイフが心を持って動き出すというショッキングな話だが、言葉を一つ一つ覚えてゆく人形を韓国のぺ・ドゥナが演じている。これ以上はないくらいぴったりの役だ。彼女を買った主人が住むのは、佃島の高層マンション群が川向うに立ち並ぶ古い街並みだ。まるで人形が街を発見するように、全く新しい目で下町の情景を繊細にとらえている。小さな花やゴミ置き場さえも美しい。これはどこかで見たことがあるぞという既視感があり、ホウ・シャオシェンの『珈琲時光』の描く神田や雑司ヶ谷が思い出された。俳優が韓国人だからこういう視点になったのかと思っていたが、家に帰ってチラシをみると撮影監督はホウ・シャオシェンと同じリー・ピンビンだったことに気がついた。こちらは秋にシネマライズなどで公開だ。
二つの映画はもちろん演出もすばらしいが、下町の美しさの表現は笠松とリーという2人の撮影監督の力量によるところが大きい。映画は街を再発見し、東京の今後の街づくりについて改めて考える機会を与えることもあるのだと思った。
ちなみに英語のdowntownは繁華街とか中心街の意味で、「下町」とは全く違うので要注意。old townとかold streetsとかだと、だいだい伝わります。

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