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2009年7月 1日 (水)

佐藤優

学生に「チェコのフロマートカは知っていますか」と聞かれて、確かどこかで触れられていたなと本棚をめくっているうちに佐藤優の『獄中記』にたどり着いた。
2006年末に出た本で、年末の海外旅行中に飛行機の中で読んだはずだが、あらためて読むと妙に感慨深い。外務省の主席分析官として活躍していた佐藤氏は、鈴木宗男議員に対する国策捜査的な動きの中で、外交資料館に左遷される。しばらくするとそこで逮捕されて獄中で512日を過ごすことになる。
私自身は現在大学で教えており、逮捕されたわけでもないのだけれど、よかれと思ってやりすぎた結果異動になり、その後組織を去って別世界に生きる感触は少しだけ近いものがある。国家に養われながら、自由な時間が無限にあっていくらでも本が読める大学は、どこか牢獄に似ているかもしれない。
それにしても佐藤氏の読書の量、それ以上に読む本のレベルの高さはとても真似ができない。
一度佐藤氏を見かけたことがある。あるホテルのロビーだったが、ぎょろりとした目に殺気さえ感じたのをいまさらのように思い出す。
ここまで書いた分を見直していたら、佐藤氏の有罪確定のニュースが入った。執行猶予付きとはいえ、上司の了解を経てやった仕事で担当者が有罪となるとは、聞いたことがない。彼は課長でさえなかったのだから。
人間の組織は、ときおり志の高すぎる者を排除する。

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