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2009年7月 8日 (水)

日本映画の挑戦

以前このブログに今年の日本映画は豊作だと書いたが、その影には必ずしも大成功とは言い難い作品も少なくない。
現在公開中の『蟹工船』は、最近話題の戦前のプロレタリア文学にSABUが取り組んだものだが、原作の暗澹たる雰囲気はなく、むしろ未来的な不思議な空間が印象に残った。見ていて笑うことも泣くこともできず、何をいいたいのか今ひとつピンとこないが、かつての社会主義リアリズムではなく、21世紀的な労働と映画の形を示そうとした意気込みは評価すべきだろう。主人公の松田龍平の演技もその意図にぴったりだ。
9月に公開される崔洋一監督の『カムイ外伝』もまた、感情移入のしにくい、とらえどころのない映画だ。主人公の松山ケンイチはその野性的な風貌や動きがぴったりだが、いったい何のために逃げ、人を殺すのか、伝わってこない。それでも走り続ける松山はどこか未来的で、これまでにない映画を目指そうとしている感じはわかるが。小雪や佐藤浩市といった脇役もいいだけに、もっと人間ドラマをからめて欲しかった。この監督はCGには向かないのかもしれない。
公開中の『MWームウー』(岩本仁志監督)は、むしろそのテレビ的なアクション重視の姿勢が、映画を古めかしく見せる。手塚の奥深い漫画が、わかりやす過ぎる娯楽作品になった感じというべきか。
10月に公開される『パンドラの匣』(冨永昌敬監督)の場合は、有名な文学に絡めとられてしまって雰囲気重視の古くさい映画になった気がする。場面場面はおもしろいのに、なぜか画面が走らない。小説家の川上未映子が映画初出演ながらいい味を出しているし、窪塚洋介にはベテランの風格さえ感じられるのだが。
こうした試行錯誤を重ねながら、日本映画は新しい方向に挑戦をしていると信じたい。

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