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2009年7月11日 (土)

生誕百年

牛込・矢来町の新潮社の前を通ったら、「生誕百年 新潮文庫」と書いてあって、太宰治と松本清張の大きな写真が並んでいた。まさか二人が同じ年の生まれとは思わなかった。
一方は東北の金持ちの息子で、東大仏文学科に進み、1930年代から小説を発表し始める。戦後は『斜陽』や『人間失格』などで戦後文学の旗手となり、1948年に愛人と入水自殺する。その作風はモダンで諧謔に満ち、現代も愛される。
もう一方は貧しい生まれで、高等小学校卒。印刷会社などの仕事を経て徴兵され、戦後は新聞社の意匠部で務めながら1950年に初めて小説を発表する。太宰が死んでから2年後にデビューしたわけだ。『砂の器』や『点と線』など推理小説でありながら、高度成長を歩む戦後日本の矛盾を露呈させたドロドロした作品を発表し、大衆に愛された。
その違いは写真を見るだけで明らかだ。色白で倦怠感溢れる太宰と、自分を虐げた世間をにらみつけるような清朝。清朝の写真からは戦後日本の歩みが匂ってくるようだ。もし太宰が長生きしていたらきっと清朝に嫌われたに違いない。2つの写真を見ていると、「君に何がわかる」と太宰に向かって言う清朝の口調が伝わってきそうだ。
『斜陽』『パンドラの匣』など今年になって続々と映画化が進んでいるのは太宰だけ。清朝の世界は、現代日本ではもはや忘れたいものかもしれない。

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