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2009年7月28日 (火)

『パリ・オペラ座のすべて』

10月に公開されるフレデリック・ワイズマン監督の最新作の試写を見た。
パリ・オペラ座のバレエ団を撮ったドキュメンタリーで、2時間40分だが長さを感じさせない。
通常こうしたドキュメンタリーは、ダンサーたちのドラマやある舞台ができあがるまでを描くものだが、ワイズマンはいつもの通り、オペラ座の「日常」を淡々と描く。
リハーサルも、本番も、食堂のシーンや内部の会議、個人面談、観客たち、街の風景といったショットに自然につながっている。まるで見ている自分が透明人間になったように、我々はオペラ座のあらゆる場所に出入りし、そこに流れる空気を吸う。ほとんど覗き見に近い。そこにあるのは劇的に見えるものもそうでないものもあえて日常的に並べて行くワイズマンのシニカルな視線だ。
現在上映中の『精神』や『嗚呼 満蒙開拓団』と違って、撮る人やカメラを限りなく意識させない。そういう意味では、ニュース映画を含めた古典的なドキュメンタリーに近いだろう。しかしこの映画にはナレーションさえもない。オペラ座のさまざまな空間と時間の断片がころがっているだけだ。そうしてその断片の山は、人間存在の真実に近づいて行く。
そういえば、数年前にパリでワイズマン監督が演出した舞台『おお麗しの日々』を見た。主人公の女性が何故か次第に腰まで地面に埋まってゆくサミュエル・ベケットの戯曲だ。ベケットの不条理な物語が、ワイズマンの淡々とした無機質な演出にぴったりで、ベケットも古典になったことを感じさせた。

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