『アニエスの浜辺』
かつてのヌーヴェルヴァーグ唯一の女性監督、アニエス・ヴァルダの遺言的作品だ。
生まれたベルギーのイクセル、幼少期を過ごした南仏のセート、パリの自宅兼スタジオ、70年代を過ごしたカリフォルニア。思い出の場所にカメラを持ち込み、自ら話す。そこに差し込まれるのはそれぞれの時代に撮られた写真や映画。後に撮られたドキュメンタリー映像もあれば、少女時代のアニエスの格好をした少女が演じるのを今回劇映画のように撮影したシーンもある。もちろん最愛の夫だった監督のジャック・ドゥミは、まんべんなく出てくる。
最初に海辺に鏡をいくつも並べるシーンがある。ルネ・マグリットもベルギー出身だが、アニエスが時空を超えたマグリット的なシュールな組み合わせが何よりも好きだったことがこの映画を見るとよくわかる。マグリットの絵に白い布で頭を覆われた恋人たちの絵があるが、この映画ではそれを再現さえしている。
ヌーヴェルヴァーグとは何だったかについて聞かれて、「プロデューサーのボールガールがゴダールや私たちに金をかけずに映画を作ってくれと頼んだから」と実に簡単に答えるのもおかしい。
ただし113分は少し長いかもしれない。終わりには家族も助手も全員集合で、前にこのブログで芸術家の世襲をからかった私としては、ちょっとうんざりした。コクトーの『オルフェの遺言』くらいの慎みが欲しかったかも。
岩波ホールで10月10日から公開。
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