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2009年7月 7日 (火)

『中国10億人の日本映画熱愛史』

劉文兵という中国人留学生が書いた本が、集英社新書から出ている。いやいや、目からウロコとはこのことだ。
文化大革命の直後、1978年以降に上映された『君よ憤怒の河を渡れ』や『サンダカン八番娼館 望郷』などの日本映画が、空前のブームとなったという。『君よ・・・』を10回以上見た人も多く、この映画を見るために4、5キロを歩いて行くことがざらだったという。「高倉健や原田芳雄、中野良子のヘアスタイルや衣装が流行の指標となり、ヒロインの役名にあやかった美容室や化粧品が数多く出現し」たという。
1980年代になって流行ったのは、『赤い疑惑』の山口百恵という。「当時の多くの女子学生が山口百恵のブロマイドを財布に入れて持ち歩き、寝室に飾った」。「コン・リー」もデビュー当初は中国の山口百恵として売り出され、山口百恵のイメージを一時的に利用した」。
最も驚いたのは『砂の器』に陳凱歌の『黄色い大地』や黄建新の『黒砲事件』などの第五世代の作品に大きな影響を与えたというくだりだ。80年代後半に第五世代の台頭に目を瞠った世代の私としては、まさかそれがあの凡庸な『砂の器』の影響があったとは信じられない。もちろんそれは第五世代に才能があったからだし、それらの才能が世の中に出やすくなった中国の社会状況が大きいわけで、日本映画はあくまで触媒となったに過ぎない。
それにしても1970年代の日本の普通の娯楽作品がこんな影響を与えていたとは驚いた。海外における日本映画の評価というと、黒澤や溝口、小津などばかりを考えるのは欧米だけを基準にしたものだとわかった。

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