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2009年8月 7日 (金)

『倫敦から来た男』

久しぶりにコチコチの映画原理主義の映画を見た。タル・ベーラの新作は、ジョルジュ・シムノンを原作とした白黒の文字通りのフィルム・ノワール。かつてのアンゲロプロスやフィリップ・ガレルがそうだったように、ストーリーよりもいかに美しい映像を見せるかに全力を傾けた映画だ。

部屋には鳥かごがあって、窓からは溢れるような光が差しこむ。女が戸を閉めると次第に暗くなって真黒に。聞こえるのは水の音だけ。こんな光と影のドラマが2時間以上続くが、退屈しない。
波止場の風景やそこに立つ監視塔、カフェ兼ホテル、自宅、娘が勤める店など、これ以上ないような荒涼としたセットをカメラが舐めるように動き回る。溝口健二やジャン・ルノワールを真似してゴダールを初めとして多くの監督たちが長回しに挑んだが、タル・ベーラほど成功した人はいないのではないかと思ってしまう。
それから主人公の妻としてティルダ・スウィントンが出てきた時は、腰を抜かすほど驚いた。イギリスの刑事役の役者もいい。みんな吹き替えだが、気にならない、むしろかえっていい。
かつてはこういう映画を配給する志の高い会社はいくつもあったが、ほとんど20世紀のうちにつぶれてしまった。シネセゾン、ヘラルド、配給をしていた頃のユーロスペース等々。生き残ったのはこの映画を配給するビターズ・エンドくらいだ。11月公開。

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