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2009年8月19日 (水)

『ジョルジュ・ビゴー展』

東京都写真美術館で今月23日まで開催中の「ビゴー展」をようやく見た。ビゴーの絵は文庫などにもなっているのでわかったつもりでいたが、今回大量の版画や印刷物などの「原寸大」で見て、あらためてその観察力や感性に驚いた。

ビゴーの描く世界の一般的なイメージは、出っ歯で目が吊り上がった明治の日本人が似合わない背広を着て西洋人に対して威張っている様子を皮肉っぽく描くといった類いのものだが、そんなに簡単ではない。あらゆる職業の日本人を愛情を込めて描いたり、生活のちょっとしたおかしな場面を捉えている楽しい絵がたくさんあった。
皮肉が強くなるのは、政治家や威張る人間に対してだ。西洋人に対しても情け容赦なく皮肉る。鹿鳴館で飲み過ぎた淑女や日本人にだまされる西洋人をおもしろおかしく描く。
驚くのはその政治性の強さだ。女性のドレス姿の伊藤博文と相撲取りの姿の黒田清隆を描いた絵があったが、いったい当時の日本でここまで描いて大丈夫だったのだろうか。
ビゴーは1882年に来日し、1899年に去る。17年もいたわけだ。最初は日本への愛情があふれる絵が多いが、どんどん皮肉が増してゆくのがこの展覧会でよくわかる。
それを見て思ったのだが、日本にフランスから映画が伝わった時代と重なっているということだ。2人のフランス人映画カメラマンが来たのは1897年から98年にかけてだ。今日「明治の日本」として知られる映像には、近代化してゆく日本は感じられず、ましてや政治家の姿などはない。芸者や剣道や歌舞伎といった古い日本のみが目立つ。ビゴーといったいこの2人の映画カメラマンは交流がなかったのだろうか。19世紀末の日本の表象には、まだまだ謎が多そうだ。

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