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2009年11月 5日 (木)

成島柳北の欧州日記は爽快

芥川龍之介の書簡集を買ったら同じく岩波文庫の新刊として並んでいたのが『幕末維新パリ見聞記』。成島柳北の「航西日乗」と栗本鋤雲の「暁窓追想」をあわせたものだが、成島の日記が抜群に楽しい。明治5(1872)年9月から翌年6月までのパリを拠点にした欧州旅行記だが、毎日いろいろなものを見て歩いたことを克明に記述している。

柳北と言えば『柳橋新誌』や『朝野新聞』の発行者として有名だが、この日記はそういったジャーナリストとしての活動の直前の36歳のもの。
驚くのは何も恐れずポジティブに楽しむ姿勢で、毎日演劇、オペラ、キャバレー、美術館、教会、公園、裁判所、刑務所、墓地など何でも見て回って「学ぶところ多し」となる。夜になると「ザングレイ楼に飲む」とか「パレーロヤルの一楼に飲む」とかやたらに高級レストランで豪遊している。当然チョンマゲに袴だったに違いないが、何も憶するところなく疲れを知らずに楽しんでいる様子が伝わってきて爽快だ。イタリアに行く途中でブルゴーニュで降りて「名産のマコン酒を飲み。甚だ美なり」などと書く。とにかく酒や食事を楽しんでいる。現在と違って初めて食べるフランス料理やワインのはずなのに。そのうえ仏語や英語のレッスンまで毎週受けているから驚きだ。

パリを拠点にベネチア、フィレンツェ、ローマ、ナポリと下り、またパリに戻ってロンドンへ向かう。その間も驚異的にポジティブな見学は続く。泊まるホテルもパリでグランド・ホテルに泊まったかと思うと、ベネチアではルナだ。ともに今もある高級ホテルだ。

「帰途、酔に乗じてアンボアズ街の娼楼に遊ぶ」などと娼婦のもとに通う記述も当たり前のようにときおり出てくる。これもあっけらかんとしている。

明治初期の日本人は、外国に対してこのような爽快さ、鷹揚さ、積極性を持っていたのかと驚くのみ。それにしても毎日のように旅行中のさまざまな日本人と会っている。いったい何人の日本人がいたのだろうか。

成島の日記は一日たりとも欠けていない。旅行中に毎日書くのは大変なことだ。このブログもそれにならって毎日続けよう。

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