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2009年11月 1日 (日)

朝日のトンデモ記事は土曜夕刊?

朝日新聞の一面や社会面、社説にはときおりとんでもない記事が載っていると以前書いたけど、昨日の夕刊社会面トップがそんな感じの記事だった。「「海外で邦画」上映権8千万円ムダ」という見出しで何事かと思って読むと、会計検査院の指摘をよく調べずにそのまま書いたレベルだった。土曜は役所や企業が休みなので、こういうトンデモ記事が載りやすのかな。

簡単に言うと、国際交流基金が海外向けに購入した日本映画があまり上映されていない、という話。全体で6割が使われていないというけど、上映先を特定しないで選んだ映画が100%上映される方がありえないだろう。1回あたり約2万5千円の上映権なら、通常の上映料の半分か1/4なので、全体としては妥当な金額だ。それを鬼の首を取ったように「8000万円のムダ」とは、数字だけを見ている証拠。
公立美術館がウン百万円で購入した絵画が、何年も公開されていないと批判するというのと同じく、文化を数量で測る役人の発想でしかない。仮にある映画が一度しか上映されなくても、重要な上映会で数百人の観客がいて高い評価を得られれば、十数人の上映会を何度もやるより効果がある。
この記事にはそういう具体性がない。どの映画が一度も上映されなかったのか、そもそも去年購入された映画にどんなものがあるのか、「選定委員会が選定」というが、誰が委員なのか。「性描写・怪談…現地で敬遠」と見出しがあるが、その具体的な例を自分で調べた形跡もない。

だからといって同基金のやり方が正しいと言いたいのではない。むしろ完全な時代遅れのやり方というべきだろう。説明すると、1970年代までは日本の映画は黒澤、溝口以外はまず海外で上映されなかったから、基金は日本映画を年に10本ほど選んで16ミリプリントを購入し、英語、仏語、西語などの字幕を付けて、パリなどの拠点都市に「フィルムライブラリー」と称してストックして貸し出していた。しかし、だんだん日本映画が海外でマーケットを獲得するにつれ、人気のある映画の製作者は、基金に映画を提供しなくなった。ビデオやDVDを考えると海賊版も怖い。従って現在のリストは売れ残りばかりで魅力が薄いものになった。上映回数が少ないのも無理はない。そのうえ16ミリ自体が完全に時代遅れだ。

基金は「フィルムライブラリー」システムをやめるべきなのだ。むしろ秀作の外国語字幕を付ける補助金を出して、海外に出てゆくことを援助したらいい。デジタル素材なら日本から送っても送料は安いし、今後はデジタル配信だって可能だろう。現地の基金事務所や大使館に頼んでタダで字幕つきを借りて上映するような上映会はろくなもんじゃない。

朝日に書いてあるように「映画を購入する際は、あらかじめ大使館の担当者と協議」するのだけはやめてほしい。各地の日本大使館の意見など聞いていたら、お役所公認みたいな映画しか選ばれない。そんなリストはもっと役に立たない。そもそも一括購入制度自体が時代遅れなのだから。

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