テリー・ギリアムの新作にブニュエルを思う
1月公開のテリー・ギリアム監督の新作『Dr.パルナサスの鏡』を見ていて、その数日前に見たルイス・ブニュエルの『昼顔』をなぜか思いだした。もちろんカトリーヌ・ドヌーブが究極のエロチスムを見せるブニュエルの異色作とは筋もテーマも全く違うのだけれど、その人を食ったような大胆不敵さにどこか近いものを感じた。
『Dr.パルナソスの鏡』は、現代のロンドンに登場した旅芸人の一座の物語だ。旅芸人といっても、トラックの上に時代ががった壊れそうな舞台があるだけ。ところがそこにある鏡を抜けると奇想天外な別世界が待っている。パルナソス博士を脅す悪魔Dr.ニックを演じるトム・ウェーツがいい。煙草を吸いながらあのしゃがれ声で適当なことを言う。そのいかがわしさ。リリー・コール演じるヴァレンティナの人形のような不思議な魅力。別世界への窓となる鏡だってアルミのようにビラビラとなびくちゃちなもの。
撮影中に主人公のトニー役のヒース・レジャーが亡くなるというアクシデントがありながら、鏡の中ではトニーが観客の願望に従って変わるといういい加減な設定を思いつき、ジョニー・デップ、ジュード・ロウ、コリン・ファレルの3人が次々と演じるご都合主義。
ロンドンの街中でこんなことを平気でやってのけるのは、テリー・ギリアムくらいだ。前作『ブラザーズ・グリム』の厚ぼったい作りではなく、軽いタッチの大いなるユーモア映画だ。
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