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2009年11月22日 (日)

川本三郎著『荷風と東京』は最高の荷風入門

川本三郎氏の『荷風と東京 「断腸亭日乗」私註』が今度上下二冊の文庫になったので買った。かつて『東京人』で連載していた頃に時折読んでいたが、まとめて読むと荷風とは何かが手に取るようにわかる。

かつて『断腸亭日乗』を読んだ時には読み取れなったものがどんどん出てくる。荷風は下町を愛しながら下町の子になれなかったこと。移り住んだ麻布の偏奇館は現在ではヴィラ・ヴィクトリアというマンションを経て泉ガーデンタワーとなったが、そこには小さな碑があることを川本氏は書く。
荷風は谷崎と違ってグルメではなく、同じものを食べ続けたこと。好色だが、素人には手をつけなかったこと。砂町のガスタンクなど殺風景なものも好きだったこと。
大正末から省線電車が終電を朝一時過ぎにして辻自動車が現れて、東京が夜型都市になったこと。荷風が最後に見た映画はヘップバーンの『パリの恋人』だったこと。戦時中はフランスの勝利を祈っていたこと。そして「日乗」を書き続けることで精神の平静を保ったこと。

川本氏は「日乗」をたどりながら、今の東京を歩き、そして荷風の小説と日記の間も行き来する。あるいはこれまでの荷風研究も言及する。読みやすいエッセー風でありながらも、過不足のない現代流荷風研究の嚆矢と言うべきだろう。

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