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2009年12月 4日 (金)

『女優 岡田茉莉子』は堂々とした自伝

10月に出た時にすぐ買っていたのだけれど、厚いので何となく敬遠していた。が、読みはじめると止まらないくらいおもしろい。

有名な岡田時彦の娘なので、何不自由なく育ったお嬢さんがそのまま女優になったのかと何となく思っていたけれど、普通の人と同じくらい苦労して悩み、戦争では大変な目に会い(一時期上海でも暮らしている)、自分の手で女優の座を勝ち取っていったのだとわかった。映画に初めて出る時から、吉田喜重と結婚する時もその後の人生も、大事なことはすべて自分で決めてきた女性の堂々とした生き方が伝わってきて、読んでいて気持ちいい。
彼女が出た二百本近い映画の中で小津や成瀬の監督作品は見ていても、そのほかの大半は見ていない。自分が日本映画について何も知らないことを痛感させられた。そのうえ彼女は舞台やテレビにも相当出ている。
自分の父親が有名な映画俳優であったことを知るくだりや、母とのやりとりもいい。そうして吉田喜重との出会いやその後一生尊敬している様子も快く伝わってくる。
1970年代になると吉田喜重は美術ドキュメンタリー・シリーズ「美の美」を撮ったり、メキシコとの合作準備で海外旅行が増える。岡田は舞台やテレビをこなしてゆく。一見まったくすれ違っているようだが、不思議と二人の間に齟齬はない。
ひょっとして女優の自伝としては、高峰秀子『わたしの渡世日記』以来の傑作ではないか。

実は本人と何度か会ったことがあってちょっと怖いイメージだったが、その奥にあるものを少しわかったような気がする。

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