テレビを振り返る2冊
テレビの歴史を振り返る本を文庫本で2冊続けて読んだ。一つは森達也の『放送禁止歌』で、もう一つは小林信彦の『テレビの黄金時代』。
『放送禁止歌』は、1999年にフジテレビの深夜枠で放映された同名のどきゅめんたりー番組を作った森が、それをもとに書いた本だ。放送を禁止された歌は、岡林信康の「手紙」、赤い鳥の「竹田の子守唄」、美輪明宏の「ヨイトマケの歌」、渡辺はま子の「支那の夜」などなど、いくらでもある。それぞれの経緯を丁寧に追いかけた本で、結局のところテレビ局のいいかげんさというか、臭いものにふたの体質だけが浮かび上がってくる。しかし現在ではちょっと古くなったテーマかもしれない。ネット上でいくらでも歌詞があり、youtubeで曲まで聴けるのだから。先日朝日新聞で「イムジン河」をめぐる記事が載っていたけれども、これも今では全くタブーでなくなっている。
ところで私は「竹田の子守唄」の竹田は大分県の竹田と思っていたうえ、どうも「五木の子守唄」と混同していたようだ。竹田は京都の被差別部落だとはこの本を読んで知った。
『テレビの黄金時代』は、1960年代の日本のテレビ界を内側から描いたもので、むやみにおもしろい。物心ついた時には日曜の夜に「シャボン玉ホリデー」や「てなもんや三度傘」などを見ていた自分としては、この頃の番組は原風景の一つである。植木等の「お呼びでない?」とかハナ肇の「アッと驚く為五郎」とか実によく覚えている。出てきた頃のクレージー・キャッツやドリフターズ、コント55号のおかしさも鮮明だ。
小林は永六輔、井上ひさし、青島幸男、大橋巨泉といった連中と共にそうした番組の台本を書き、アイデアを出していた。彼はテレビの黄金時代は1962年あたりから1972、3年あたりまでと言う。まさに自分が浴びるようにテレビを見ていた頃だ。自分のユーモアセンスは、その頃のものを引き継いでいるからくどいのかなと思った。
この本は時代の証言として残るだろう。
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