この10年の最高の映画は
フランスの『カイエ・デュ・シネマ』誌の2月号は毎年「去年のベストテン」を選ぶのだが、代わりに今年は2000年代のベストテン映画というのを選んでいてこれが意外におもしろい。『カイエ』の同人だけではなく、外部の映画評論家や映画監督にまで頼んでいる。外国人にも頼んでいて、日本からは蓮實重彦氏や黒沢清、青山真二両監督が参加している。
『カイエ』同人の総合一位は『マルホランド・ドライブ』だ。以下、『エレファント』『トロピカル・マラディ』(アピチャートポン・ウィーラセータクン)と続く。日本ではどれも10位に入らないだろう。
蓮實氏は1位に4本。『アレクサンドラ』『チェンジリング』『愛の讃歌』(ゴダール)『労働者たち、農民たち』(ストローブ=ユイレ)。
黒沢氏は『宇宙戦争』『ヒストリー・オブ・バイオレンス』『ミスティック・リバー』の順。
おもしろいところではペドロ・コスタで、「すべてのストローブ=ユイレの映画」「ほとんどすべてのゴダールの映画」『行きつ戻りつ』(モンテイロ)『M/Other』(諏訪敦彦)『プラットフォーム』と続く。
タランティーノは別格1位として深作の『バトル・ロワイヤル』を挙げている。そのほかの9本には、三池の『オーディション』や『ロスト・イン・トランスレーション』など。
10年という括りは、特に21世紀の最初だけに、あるいは始めに「9.11」があっただけに、不思議な歴史的思考に誘う。日本の雑誌や新聞でもやったらどうだろうか。
そのほかこの10年の映画をめぐるエッセーが並んでいて、アジア映画についてはまず韓国映画の躍進が挙げられている。日本は台湾と同じく、いい作品はあるが、すべて90年代から知られた監督で新人は出ていない、という意味のことが書かれている。
実は今月の『カイエ』で何より驚いたのは、表紙を開けた左側の広告で、何と「日活ロマンポルノDVD30本発売開始!」だった。「そしてポルノが芸術になる」とキャッチが書かれている。世界は均質化している。
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