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2010年1月31日 (日)

『プレシャス』は筋金入りの黒人映画

アメリカ映画に黒人が出演するのはラテン系と共に今やお定まりになったが、本当に黒人の視点から描いた映画は意外と少ない。古くはサイレント時代ののオスカー・ミショー(昔、フィルムセンターで何本もやった)、最近ではもちろんスパイク・リー。リー・ダニエルズが初めて監督した『プレシャス』は、この系譜に連なる筋金入りの映画だ。

誰が見てもブスで図体ばかり大きな黒人の少女プレシャスが主人公で、父親の子供を2度も孕まされ、それがもとで転校させられてそれでも生きてゆくさまを描く。そう書くとずいぶん悲惨な物語に見えるが、主人公のモノローグを中心に、手持ちカメラによるドキュメンタリータッチの映像と、彼女が夢見る幻想の場面がうまく組み合わされていてユーモアもあり、見ていると主人公に同化していってしまうほどだ。
特に普通の学校を追い出されて、代替のフリー・スクールに行ってから、がぜんおもしろくなる。問題だらけの生徒たちが何とも魅力的だ。寛大な先生に次第に心を開いてゆく。これまでいいことのない人生を送ってきたプレシャスの心も和らぎ、自分の生き方を考えだす。
プレシャスを演じるガボレイ・シデベが抜群にリアルだ。先生役のポーラ・ハットンや嫌な母親役のモニークもピッタリ。マライヤ・キャリーやレニー・クラヴィッツといったミュージシャンによる脇役もいい味を添えている。

監督のリー・ダニエルズは、『チョコレート』(原題は何と"Monster's Ball")のプロデューサーという。そういえば、あの映画も死刑囚の黒人が処刑されて、ハル・ベリー演じる妻がさらに事故で息子を亡くすという悲惨な物語だったが、完璧に黒人の側に立ったすがすがしい映画だった。『チョコレート』でハル・ベリーがアカデミー賞の主演女優賞を取ったように、この映画もオスカーを取りそうな気がする。

日本人にとって人種問題はどこか遠いできごとのように思われているが、この映画を見たら世の中に広がるあらゆるマイノリティの存在について考えざるをえないだろう。GW公開。

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