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2010年1月 6日 (水)

「流れすぎる」映画

珍しくハリウッド・メジャーの試写を見た。メリル・ストリープ主演の『恋するベーカリー』だ。前に『沈まぬ太陽』を評して「テレビのような」と書いたけれど、これはそんなことはない。よく練られたシナリオとメリル・ストリープを中心に過不足なく配置されたキャストが流れるように家庭劇のアンサンブルを見せてくれる。

問題は「流れすぎる」点だ。別れた夫婦がヨリを戻す過程を、これでもかと見せる。夫役のアレック・ボールドウィンがちょっとくどいけれど、微笑ましいとも言える。この何の滞りもない、悪意のない家庭劇を見ていると、これはどっちに転んでも(つまりこの二人が復縁しようがすまいが)いい話だとわかってくる。たぶん大多数の観客にとっては安心して見られるドラマで、特に50歳以上の夫婦にとっては味わい深い物語だろう。
ただへそ曲がりの私は、始まって1時間くらいたつとその「流れすぎる」安定感にちょっと引いてしまった。単に私はこのような映画には向いていないのだろう。それから、60歳のメリル・ストリープをどうしても魅力的とは思えなかったが、これも趣味の問題。
原題はIt's comlicated.で「流れすぎる」の逆だ。『卒業』から妙なシーンが引用されている。2月19日公開。

そういえば、全く「流れない」日本映画の試写を見た。太宰治原作、荒戸源次郎監督の『人間失格』だ。これはいくつかの場面は実にカッコいいのだが、話が流れていかない。冒頭の「アベ・マリア」を鳴らすレコードを大楠道代がかけるシーンは鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』のようで惚れ惚れするし、洞窟の中の線香花火とか、秋の野原の風景とかも凝りに凝っている。でもそれが全体の映画らしい盛り上がりにつながらないところがいかにも残念だった。2月20日公開。

流れすぎても流れなくても、文句ばかり言いたくなるのが映画である。

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