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2010年2月 4日 (木)

奇書『この世のすべては私のもの』に惑わされた一日

ヘンな本を読んだ。大学に通うようになって私鉄によく乗るが、その出発駅に小さな本屋があってそこで見つけたわずか千円の薄っぺらい作りの本が『この世のすべては私のもの』。躁鬱病患者の手記だが、奇書という言葉がぴったりで、昨日は一日これに惑わされた気がする。

著者の加藤達夫氏は躁状態で突然バンコクに旅立ち、お金を使いすぎて足りなくなりタイ警察に捕まる。そこでの暴言や奇行によって国際拘置所に移され、そこでイラク人やイタリア人のボスと仲良くなる。日本に強制送還されるが、数年たつとイタリアにマフィアのボスに会いに行く。あるいはイラクのボスに再会するためにバンコクに行く。
すべては著者が後に振り返って書いているが、そのまだらボケというのか、ある部分は極めてまじめである部分は完全にタガがはずれている。他人に対して異常に親切だったかと思うと、平気で膨大な金額の送金を両親に頼む。医者になろうと思って東大に行くか京大に行くか真剣に悩んだり、福岡で学習塾をやろうと思ったり、バンコクで日本料理店をやろうと思ったりボクサーになろうと思ったり。手付金まで払ってしまう。「後から考えるとつじつまの合わないことだらけだが、その時は瞬間瞬間でベストを選んでいるという意味で整合性が保たれていると思い込んでいた」と自ら振り返る。

読んでいて恐ろしいのは、この一歩手前の人間を海外で見たことがあったり、あるいは身近に知っていたりすることだ。あるいは自分自身にもこうした誇大妄想の部分があるように思える。精神が不安定な人はこの本を読んだら影響されるかもしれない。

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