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2010年2月11日 (木)

あらためてスクリーンで古典映画を見ること

先週末から全国の東宝シネマズ系で「午前10時の映画祭」というのが始まっている。『ローマの休日』とか『アラビアのロレンス』とか、いわゆる外国の名画を50本、ニュープリントで入場料1000円(学生500円)で上映する。まるで文化庁の「優秀映画鑑賞会」の洋画版のような企画をなぜ東宝がはじめるのだろうか。東宝のことだから最終的にはビジネスになると踏んでのことに違いないが、DVDやテレビ放映、映像配信の時代にあえて映画館用にプリントを作って上映するとは。

そういえば、岩波ホールでは2月20日から「岩波ホール セレクション」と銘打って昔のフランス映画『海の沈黙』と『抵抗』を上映する。シリーズと言うからには今後も古典を上映するということだろう。
そこにあるのはたぶん2つ。1つは「洋画離れ」対策だ。最近、外国映画の観客が減っている。厳密に言うとアメリカ映画の大作はむしろ観客数は増えているので興行収入は横ばいだが、公開本数が激減している。2008年で388本だったのが、2009年で314本。もちろん2000年以降で最低だ。今年は確実に300本を大きく切ると言われているから(洋画の買い付けは公開の半年以上前だから推測ができる)、そうなると1980年代前半、つまりミニシアターブーム以前に戻る。
なぜ本数が減るかと言えば、配給会社が何社もつぶれ、生き残ったところは買い控えているからであり、なぜそうなるかと言えば、観客がアメリカ映画以外をなかなか見なくなったからである。最近は字幕が嫌いだという若者が増えているらしい。もうすぐ吹き替え版のアメリカ映画の大作が外国映画の半数を占めるのだろうか。
東宝や岩波の試みは、外国映画はすばらしいことを再認識させて、今後も映画館に外国映画を見に行かせるというのが目的だろう。もうひとつの目的は、シニア層のさらなる掘り起こしだと思う。もはや外国映画、特にアート系の観客の大半はシニア層だ。若者に期待してもしょうがないから、シニア向けの古典を組むということだろう。

先日、『海の沈黙』を試写で見た。白黒の濃淡のはっきりした画面で繰り広げられる3人の緊迫した室内劇に見入ってしまった。前衛劇のように3人の視線は混じり合わない。初めにハワード・ヴェルノンが現れた時の目の輝きといったら。彼が静かにバッハを弾くさまを逆光で映す。四半世紀前に見て以来だが、こんなに計算されたモダンな演出だとは思わなかった。

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