映画という因果な商売
フランス映画の新作『あの夏の子供たち』の試写を見た。いわゆる映画界の話で、自ら小さな映画製作会社を経営する40代後半の男が資金繰りが苦しくなってとうとう自殺してしまい、後に残された妻と3人の娘はそれを乗り越えて生きて行く。自分と同世代の男の話でもあり、見ていてひどく身につまされた。
私自身は映画会社を作ったことがないけれど、小さな映画会社を経営している友人は日本にも外国にもたくさんいて、会社を潰したり売ったりした人も知っている。幸いにしてその中に自殺した人はいないが、この映画のモデルとなったアンベール・バルサンのことは、数年前に自殺した時によくフランスの映画人の話題に上った。
なかなか儲からなくても、どんなに痛い目にあっても映画界で働き続ける人は多いし、映画界に入りたい人は数知れない。危ないとわかっていてもつい夢を追って手を出してしまい、失敗をする。
映画というのは、本当に因果な商売だと思う。
身につまされたし、残された子供たちを見ていると涙が出てしまい、冷静に見ることができなかった。監督のミア・ハンセン=ラブの演出は的確で感情に流されることがなく、幸福から突然の悲劇、そしてその後の移り変わりを日常のディテールを積み上げながら淡々とを描きだしている。妻がシネマテークに行った夫を迎えに行って、セーヌ川の橋を渡りながら励ますシーンが特に記憶に残った。
公開は初夏で、その前に3月のフランス映画祭で上映。
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