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2010年2月28日 (日)

『アバター』から『第9地区』へ

まえにこのブログで『アバター』の文化人類学的分析を読んでみたい、と書いたら数日前の朝日新聞に生井英考氏など3人の分析が載っていておもしろかった。アクセス解析のログで見ると、朝日新聞からのアクセスが1日に5件はあるので、ひょっとしてこのブログを見て記事を思いついたのかな、などと考えると楽しい。
『アバター』と同じくらい文化論的な分析をしたくなる映画がGWに公開される『第9地区』だ。『アバター』の裏面と言ってもいいかもしれない。

設定が暗い。南アフリカにやってきたUFОは、なぜか上空に留まり続ける。偵察に行くとエイリアン難民が何十万人と出てきて、『第9地区』と呼ばれる地域に集めて住ませることになる。彼らの不潔な感じもさることながら、その甲殻類のような顔がかなりグロテスクだ。
物語は、周辺住民の反対運動から別の地区へ移動させる任務を負った主人公が、次第にエイリアンの側に立って、最後はエイリアンと組んで人類と戦って、彼らは宇宙へ帰るという設定になっている。

そもそも人種差別で有名だった南アを舞台に、エイリアン向けのゲットー地区を作るなんて、ブラック・ユーモアでしかない。それを移動させるために右往左往するなんて、沖縄の基地問題を考えてしまった。なぜかナイジェリア人がエイリアンの周辺に住んで、地球人との間で武器を売買したりするのも現代アフリカの縮図のようでリアルだ。
エイリアンと地球人の中間の存在になった主人公がだんだんエイリアンの側に立つ構造は、『アバター』にそっくりだ。ほかにもエイリアンが独自の高い技術を開発していたり、鬼軍曹みたいな存在が地球側から送られて、ドンパチの戦いになるという最後も『アバター』に似ている。

違いは、『アバター』がパンドラの国の大自然の力やナヴィの人々の温かさに包まれた感じで終わるのに比べて、こちらはエイリアンはいなくなったけれど、何も解決していないような後味の悪い感じが残ることだ。
それからこの映画は、物語の進行自体をテレビが報道するという構造になっていて、ドキュメンタリーのようなリアルさも際立っている。二ール・ブロムカンプの初長編監督作品というが、マイナーな内容をおもしろく見せる不思議な力を持った人だ。

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機内映画その3、第9地区 District 9です。 年末にみて、あまりのインパクトに、昨年の極私的映画ベスト10に一気に食い込んだ。 さてそのインパクトとは..... ドキュメンタリー調で、この映画ははじまる。 そしてわかる、数あるSFの中でも、桁外れの「異様さ」 宇宙から飛来した宇宙船(写真)が、あてもないまま停泊。 留まるうちに、浮遊する宇宙船の下が、スラム化。 その数100万人。 地元住民の反対運動を受け、政府はこのスラムの撤去に乗り出す。 そして最大のインパクトは、その場所。 なん... [続きを読む]

受信: 2010年3月 1日 (月) 21時55分

» 『第9地区』お薦め映画 [心をこめて作曲します♪]
★★★★★独創的なストーリーと、リアリティのある映像。ワクワクする展開でアクションシーンも見ごたえあり。風刺は利いているが笑いに嫌みがないスマートな社会派SFドラマ。 [続きを読む]

受信: 2010年3月27日 (土) 00時18分

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