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2010年3月25日 (木)

『ハート・ロッカー』の居心地の悪さ

ようやく『ハート・ロッカー』を見た。封切って2週間たったのに、日曜夕方で600席を超すスカラ座が8割も埋まってた。もちろん期待通りの秀作だが、これを素直に絶賛するには面白すぎると思った。イラクに派遣された爆発物処理班の兵士たちの日常を描くのが、これがうますぎてどこか居心地が悪くなる。

手持ちカメラのドキュメンタリータッチで、クローズアップとロングショットをうまく組み合わせて、サスペンス満点で描かれている。
ストーリーはおおよその予測を裏切り、冒頭からガイ・ピアースが死んでしまい、あるいはレイフ・ファインズまで途中で殺してしまう。先が読めない、まさにドキュメンタリーのようだ。
見ているとどんどん興奮してきて、こんなに面白い映画を見ながら、イラクへのアメリカの対応は間違っている、などと思うのはどこか違う気がしてくる。

新聞評を調べてみると、日経に書いている渡辺祥子氏だけが「これはイラク戦争を語る映画とは違う。……米軍兵士を襲う恐怖と緊張を見る者に体感させる斬新なサスペンス・スリラーだ」と看破している。ほかはその違いに気がついていなくて、例えば毎日の勝田記者は「キャスリン・ビグロー監督は現代の戦争の風景と、それが兵士に落とす暗い影を描き出す」と書く。

今や最高のサスペンスを生み出すためには、アメリカ映画もドキュメンタリーの手法を駆使する。例えばガス・ヴァン・サントの『ミルク』にもそういうところはあるが、あくまで真実を伝えようとする『ミルク』のような映画と、サスペンスのために戦場を舞台にした『ハート・ロッカー』には、大きな隔たりがある。別にどちらがいいということではないが、『ハート・ロッカー』を呑気に反戦映画というような鈍さは許せない。

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» ハート・ロッカー The Hurt Locker 特殊なイラクの、また特殊な爆弾処理班の日々。 [日々 是 変化ナリ 〜 DAYS OF STRUGGLE 〜]
3月7日(日本時間8日)にロサンゼルスで行われるアカデミー賞。 ここで最多9部門にノミネートされているのが、「ハート・ロッカー」。 (作品賞、監督賞、主演男優賞、脚本賞、撮影賞、編集賞、作曲賞、音響編集賞、録音賞) このなかでも、作品賞と監督賞の大本命という下馬評、となると気になるのでチェックしてきた。 「爆発(死)か解除(生)」という日々の非日常性は、あまりに新鮮。 その感触は、常に死と隣り合わせの緊張感に満ち溢れすぎの日々。 最前戦の兵士だって、緊張の瞬間は毎日押し寄せるものではないだろうが... [続きを読む]

受信: 2010年3月26日 (金) 01時21分

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