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2010年3月13日 (土)

『世界は俺が回している』の読みやすさ

文学の古典を読もうと思い立ってフロベールなど何冊も買い込んだのに、一緒に買ったなかにし礼の『世界は俺が回している』を先に読んでしまった。朝の電車で読み始めて、帰りの電車では読み終わるくらい読みやすい小説だ。

作曲家のなかにしの小説では『長崎ぶらぶら節』を読んで、それなりに感動した記憶があったが、今度の小説はもっとわかりやすく、軽く流して書いたようなタッチだ。

「東京音楽祭」を立ち上げたTBSの実在のプロデューサー、渡辺正文が主人公。裕福な生い立ちから、草創期のTBSに入って次々に音楽番組を成功させながら、1972年から「東京音楽祭」を企画して成功させた華やかな人生が描かれる。仕事に命をかけてちゃんとした家庭も持たず、次から次に女と出会う話も途中にはさまれる。ストレートな成功譚で、なかにし本人までもがかっこいい役で出てくるのでちょっとうんざりするけれど、どこか捨てがたい魅力がある。
おそらく私自身が、1960年代末から80年代頃までの、「それゆけどんどん」の日本の姿を小さい時から見ていたので、何とも懐かしいのだと思う。「ロッテ歌のアルバム」でペドロ&カプリシャスの「夜明けの朝」が放送されるくだりなどは、何だか昭和のネオン街が浮かんでくるようで、たまらない。

同じ黄金期のテレビを扱った本でも、小林信彦や今野勉の回想記に比べたら、なかにし礼の作品はフィクション仕立てですいぶん大雑把だけれど、そのぶん怖いもの知らずの時代の雰囲気は伝わってくる。

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