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2010年3月 3日 (水)

「ブラングィン展」は西美ならではの企画

上野の国立西洋美術館で「フランク・ブラングィン展」を見た。実を言うと、この画家の名前は聞いたことがなかったが、ベルギー生まれのイギリス人画家で、西美のコレクションのもとになった松方幸次郎が収集しており、同時に松方のコレクションのアドバイザーだったという。
だからこの展覧会は西美そのものの起源をたどるようなもので、実に西美ならではの企画と言えよう。

画家としてのブラングィンは、いささかアカデミックな写実的絵画から色彩豊かな象徴的絵画、そしてアール・ヌーヴォーへ移ってゆく。たとえば同じ時代のマティスなどに比べれば凡庸なことは明らかだが、それゆえに時代の刻印が見えておもしろい。特にアール・ヌーヴォーの到来とともに家具をデザインし、陶器を作り、壁画を描いたりする活動は興味深い。
しかし何といってもハイライトは、「共楽美術館」の設計だろう。これは松方が収集した1万点の美術品を展示するために企画していたもので、ブラングィンが設計を担当した。結果としては関東大震災や金融恐慌で実現しなかったが、会場では図面をもとにCGで美術館が再現されていて、まるで美術館のなかにいるように見ることができる。それは豪勢な美術館だ。
もしこの美術館ができていたら、オルセーやメトロポリタン並みの大美術館になっていたはずだ。松方のコレクションは売りに出され、残っていたものも敗戦後フランス政府に没収されて、現在西美にあるのは400点弱のみだから、本当に残念だったと思う。

常設の松方コレクションを是非見てほしい。そのレベルの高さに、「もし共楽美術館ができていたら」と思わざるをえない。5月30日まで。
それにしてもフランス政府が「国宝級」という理由でとどめ置いた旧松方蔵の数十点の傑作は、いつになったら返してくれるのだろうか。

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» フランク・ブラングィン展に行ってきました。(国立西洋美術館 東京) [ペインターみんみんの油絵制作&絵画                                           画像]
みんみんです。このブラングィンという画家のことは、実は全然知らなかった。松方コレクションの中でも重要なポジションだという。今回は未知の状態で展覧会に臨んだのだが、一見して、圧巻の絵に惹きつけられた。美術には素人で多くの専門家の助言を得て収集したとはい... [続きを読む]

受信: 2010年3月19日 (金) 00時22分

» フランク・ブラングィン展 国立西洋美術館会館50周年記念事業 [Take it ez !]
2/23-5/30 初日の23日は逃したものの、24日のお昼にいってきました。 平常の12時過ぎ、会場内はすいていました。 ちなみに、今回の展示は国立西洋美術館らしくない展示内容というか雰囲気があります。中世のコッテコッテのポスターのような絵画や、または肌の質感の表現に尽力をしたという作品というのではなく、とにかく国立成長美術館での企画展らしからぬ展覧会です。別に文句じゃないですよ。でも、会場内展示数が少ないっていうか、なにか、換算としたいつもの国立西洋美術館企画展とは、あきらかに異...... [続きを読む]

受信: 2010年3月23日 (火) 18時18分

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