映画で見る不倫大国フランス
3月18日から始まる「フランス映画祭」の試写を何本か見た。最近は配給会社がいくつも潰れたこともあってか、劇場公開が決まっていない映画にも、なかなかいいものがある。その中で、『リグレット』と『旅立ち』は共に40歳頃の夫婦の不倫の話だが、ちょうど男女が逆になっていて、鏡の両面のようだ。とにかくフランス映画は、こうした不倫の描写にかけてはやはり世界一である。
一言で言うと『リグレット』は不倫をする夫の話で、『旅立ち』では妻がほかの男と恋に落ちる。ここでポイントは40代が、同世代と恋に落ちるという点だ。40代の男が20代の女と不倫をする話ならはいて捨てるほどあるが、同世代の恋愛はもっとシリアスだ。
セドリック・カーン監督の『リグレット』では、母の死で田舎に帰った男が幼なじみの女性と再会したところから始まる。すべてを捨てて女に向かう男だが、女は夫と海外に行ってしまう。激情がほとばしる映画でありながら、全体にユーモアが効いていて心地よい。純粋で馬鹿な男を演じる主人公のイヴァン・アタルがいい味を出している。恋人役のヴァレリア・ブルーニ=テデスキもいい。最後に彼が再婚して子供を作った第三の女が現れ、さらにかつての恋人と再会するという、2回のひねりもうまい。
カトリーヌ・コルシーニ監督の『旅立ち』は、もっとストレートな映画だ。自分の家の内装の工事に来た男を愛してしまう女を、クリスティン・スコット・トーマスが演じる。何不自由ない家を捨て、何も持っていない移民の男に向かう女の姿は痛々しい。昨年末にフランスで大ヒットしたというが、自由の国フランスと言えども、女性は男性に頼って生きざるをえないということなのだろうか。この映画ではイヴァン・アタルが、妻に逃げられる裕福な夫を演じていて、本当に裏表のような2本だ。
『リグレット』のような物語は日本でもありうるが、『旅立ち』は難しいだろう。日本の女性はそこまで恋愛を信じていないような気がする。映画としても『リグレット』の方が、予測不能でユーモアもあり、よりおもしろい。ぜひ劇場でも公開して欲しい。
不倫映画の新作を集める「国際不倫映画祭」なんてあったらおもしろいかな、などとバカなことを考えてしまった。特別上映は成瀬巳喜男の『浮雲』復元版とか。日本映画は昔の方が不倫が多かった気がする。
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