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2010年3月21日 (日)

音楽映画は勝利する

この春公開の音楽映画をの試写を2本見た。一つは『ドン・ジョヴァンニ』で、もう一つは『アルゼンチンタンゴ 伝説のマエストロたち』。前者はモーツァルトの有名オペラの創作の秘密を見せる劇映画で、後者は往年のタンゴ歌手が続々と登場するドキュメンタリーと全く異なるが、ともに音楽映画ならではの喜びが味わえる。

モーツァルトをテーマにした映画は数多いが、『ドン・ジョヴァンニ』はこのオペラの台本を書いたロレンツォ・ダ・ポンテというイタリア人を主人公にした異色作だ。冒頭、美しいベネチアの光景(撮影はヴィットリオ・ストラーロ)にヴィヴァルディの四季が流れる。ダ・ポンテはベネチアを追われてウィーンに着き、モーツァルトと出会う。彼の台本による「フィガロの結婚」は成功し、「ドン・ジョヴァンニ」を書き始める。そこからは劇中劇の形でオペラが演じられて現実とオペラが交錯する。
このようなおもしろい設定のわりには、いまひとつストーリーの展開力に欠けるのはカルロス・サウラという監督の特徴だが、この映画は映像の重厚さとにオペラの喜びがそれを上回る。見終わると18世紀のベネチアやウィーンにトリップしたような気分になった。

『アルゼンチンタンゴ』は、かつて当たった『ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ』のアルゼンチン版と言えばいいのだろうか。1940年代から50年代にかけて活躍した年老いたタンゴ・ミュージシャンたちが、レコーディングのために続々と集まってくる。演奏の合間には、過去の栄光や現在の生活を元気に語る。あるいは現代のブエノス・アイレスの映像やかつての演奏シーンが挟まれる。10人を超すミュージシャンにこれが続くのでちょっと平板だが、最後はコロン劇場でほぼ全員が集まってコンサートをするところで盛り上がる。20世紀初頭のアルゼンチンの豊かさを思い浮かばせる豪華なコロン劇場と、それに負けない音楽演奏で、満ち足りた気分になった。個人的には、20年ほど前に行ったブエノスアイレスの雰囲気のある街並みを思い出して嬉しかった。

2本とも映画としては傑作ではないかもしれないが、満足度は高いと思う。結局、音楽映画は勝利する。

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