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2010年4月 9日 (金)

欧州の歴史もの映画2本

丁寧に作られた歴史ものヨーロッパ映画の試写を2本見た。共に初夏公開で、1本はプーピ・アヴァーティ監督のイタリア映画『ボローニャの夕暮れ』。もう1本はジェーン・カンピオン監督のイギリス映画『ブライト・スター』。前者は第二次大戦中から戦後にかけてのボローニャが舞台で、後者は19世紀初頭のロンドン郊外の話だが、ともに若い娘の痛切な恋愛を扱いながらも語り口の違いが興味深かった。

『ボローニャの夕暮れ』は原題がIl papa di Giovanna「ジョヴァンナのパパ」で、つまりは年頃の娘が心配で仕方がない父親が中心だ。妻はセクシーで謎めいた美人女優、フランチェスカ・ネリ(私は昔から大好きです)、あどけなさを残した不器用な娘を、アルバ・ロルヴァケルが巧みに演じる。美人の妻と娘に囲まれたお父さんが一人で大騒ぎする話で、コミカルでありながら哀愁を感じさせるな父親を、シルヴィオ・オルランドが感情一杯に演じている。セピア色の画面が心地よく、ちょっと昔の名画のようなたたずまいだ。プーピ・アヴァーティ監督は、20世紀前半のボローニャを舞台にしたノスタルジックな映画を何本も撮っているが、服装や背景などどれも当時の匂いが漂ってくるようで完成度が高い。男の描き方に、どこか山田洋次と似たものを感じる。

『ブライト・スター』は、詩人ジョン・キーツと裕福な女性ファニーの出会いと悲しい結末を描いた映画で、ドラマチックな内容なのに、演出は極力押さえられていて、最初はとまどってしまう。そのうえ、物語はどんどん進んでゆく。むしろ印象に残るのは、部屋の中の青い蝶がいくつも飛ぶシーンや、窓の外の雪や部屋の中の蝋燭などの繊細な細部である。まるで主人公たちが感情表現を抑える代わりに、細部が語りかけているようだ。ファニーの服は出てくるたびに違うが、どれも柔らかな布の感触や色合いに息を飲む。そして、いくつもの詩や手紙の言葉が詩人の声で発音される時の美しさ。
これまで『ピアノ・レッスン』や『ある貴婦人の肖像』などで女性の情念を正面から劇的に描いてきたカンピオンだが、今回はまるであえて人間同士のドラマ的要素をそぎ落とし、言葉や風景の持つ力をシンプルに押し出そうとしているように思えた。

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