演出過多の映画
おもしろいがやや演出過多の日本映画を2本見た。5月15日公開の『書道ガールズ』と5月22日公開の『トロッコ』だ。一方は日テレ製作、ワーナー配給の拡大公開作品で、もう一方は単館系の映画だし、演出も全くタイプの違う映画だが、ちょっとお涙頂戴なところだけは共通している。
『書道ガールズ』は、最近一部で話題らしい女子高校生の書道パフォーマンスを描いた映画で、大半の音楽ものと同じく、ラストは涙の全国大会で盛り上がる。前半の笑いを誘ういくつものシーンも、後半のチームが団結してゆくシーンもなかなかよくきているが、まるで「ここで笑いなさい」とか「泣くシーンだよ」とフリ仮名が振ってあるようにわかりやすい。音楽も同様だ。四国の田舎町の風景(特に海岸に並ぶ煙突)も、シャッターの閉じた街並みもなかなか丁寧に撮影されているのに、これらのシーンがくどいくらい出てくる。全体をもう少し簡潔にまとめた方がよかったのではないか。
成宮瑠子の主演映画では、GW公開の『武士道シックスティーン』にちょっと似ている。こちらは女子高校生の剣道ものだが、父親がその道の先生で怖いのは同じ。しかしこちらの映画では、剣道のシーンそのものを正面から描いていたので迫力があった。『書道ガールズ』でも、前半はもっと書を書くそのものの場面が欲しかった気がする。
『トロッコ』は、撮影監督のリー・ピンビンのカメラがとにかくすばらしい。部屋の中の橙色の蛍光灯や、何よりトロッコが走る濃い緑の森。物語は、台湾人の夫の骨を届けるために日本人の妻と子供が夫の実家を訪ねるというもので、台湾の田舎の美しい景色やそこに暮らす人々を見ているだけで気持ちがよくなる。ガマガエルの声が響き、木のにおいが伝わってくる。初期のホウ・シャオシェン映画のような感じだ。ストーリーもそうだが、小津安二郎の『東京物語』の後半の原節子と笠智衆の場面に似たシーンもある。
しかし涙のシーンが多すぎ、音楽が多すぎて演出過多な気がした。もう少し淡々とした演出をしていたら、きっと傑作だろう。これが第一回作品という川口浩史監督は、これからが楽しみだ。彼が韓国で撮ったという次回作『チョルラの詩』も見てみたい。
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