« 森村泰昌の誇大妄想と沢木耕太郎の作りすぎと | トップページ | ちょっと物足りない展覧会2本 »

2010年4月27日 (火)

『アイスバーグ!』と『ルンバ!』は驚きの映画

とんでもない映画を見た。7月公開の『アイスバーグ!』と『ルンバ!』で、監督・主演はベルギーのアベル&ゴードンというカップル。最初『アイスバーグ!』を見始めた時は、ちょっと前衛的な映画かなと思ったが、不思議なギャグの連続で、物語は全く予測不能な方向に展開してゆく。

見ていると、その身体性にバスター・キートンを思い浮かべたり、無言のずれたギャグやカラフルな画面にジャック・タチだと思ったり。主人公たちの道化師のような振舞いと、書き割りのようなシーンや作りもののような海にフェリーニのことを考えたり。サービス精神たっぷりに正面を向いた演技にメリエスまで遡ってみたり。あるいは最近だとダニエル・シュミットかトッド・ソロンズか。見ているあいだじゅう思いは映画史を巡るが、結局どれにも似ていない。

『アイスバーグ!』はイヌイット女性の「私がどのように夫と出会ったかを話します」と言うシーンから始まる。ところが次はファーストフード店に勤めるフィオナのシーンで全くつながらない。冷凍室に一晩閉じ込められたフィオナは、家族の愛の不在を感じて氷山を目指す。そしてバスに乗って港町に着く。そこで無言の大男と出会い、船に乗り込む。船から見る海の美しさ、船の上の不思議なダンス、遠くの花火。どこまでも追いかけてくる夫。船に突き刺さる氷山。こう書くとチンプンカンプンだけれど、実は美しい純愛物語だ。出だしにもちゃんとつながってくる。

『ルンバ!』はルンバ大会で優勝したフィオナとドム(監督・主演)が、交通事故にあって人生が急展開する話。小学生にビールを飲ませたり、松葉杖を使ったギャグなどかなり強烈なユーモアだけれど、何とかして生きて行く二人の悲喜劇は目が離せない。ドムがチョコレートパンを買いに行って二人は別れてしまうけれど、その後の展開の切なさといったら。この映画でも『アイスバーグ!』の大男が出てくる。
ギャグの連続と映像の退廃的な美しさと沁み渡るポエジーと。フランスではなくてベルギーだからこそ生まれる、今年最大の驚きの映画である。

|

« 森村泰昌の誇大妄想と沢木耕太郎の作りすぎと | トップページ | ちょっと物足りない展覧会2本 »

映画」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/537538/48194500

この記事へのトラックバック一覧です: 『アイスバーグ!』と『ルンバ!』は驚きの映画:

« 森村泰昌の誇大妄想と沢木耕太郎の作りすぎと | トップページ | ちょっと物足りない展覧会2本 »