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2010年5月 6日 (木)

飛鳥山公園のアルベール・カーン

20世紀前半に活躍したフランスの銀行家で、アルベール・カーンという人がいる。なぜ知っているかと言うと、ずっと前にパリ郊外にその博物館を訪ねたことがあるからだ。この銀行家は、1909年から1931年まで世界中にカメラマンを送って、世界中を写真や動く映像に収める「地球映像資料館」を作っていた。北区王子の飛鳥山公園にある渋沢資料館で「渋沢栄一とアルベール・カーン~日仏芸術家交流の軌跡~」展が開かれていたので、ようやく最終日に見に行った。

展示は思ったよりも小さく、カーンと渋沢の歴史的な軌跡を中心に見せていたため、カーンが派遣した2人のカメラマンが撮った日本の映像の展示は多くなかったのが残念だった。全世界で7万枚を超すカラー写真が撮られ、100時間をあまりの動く映像が残っているらしい。日本だけでも写真が約2500枚、動く映像が50分ほどある。
パリ郊外の博物館では、ブースがいくつも設けられてそれらの写真や映像を各自が検索して見ることができるが、今回の展示はほんの一部しか見られなかった。
当時の日本を映した写真や映像は貴重な歴史資料になるだけに、本来なら国立博物館やフィルムセンター、あるいは東京都写真美術館あたりがきちんとした展覧会を開き、その映像を日本に残すべきなのではないだろうかと思った。
今回の展覧会は、日本の映像を期待していた自分にとっては少しがっかりだったが、カタログがきちんと作られていて1000円で売られていたので買った。

全世界にカメラマンを送って映像に収めるというのは、映画が誕生した時にリュミエール兄弟やエジソンがやったことである。それから1910年頃までに、映画は物語を語る商品として方向を定めて行く。カーンの「地球映像資料館」の試みは、映画の商業的な方向に背を向けてあくまで社会的な貢献として「世界遺産」の目録を作るようなものだったのではないか。ちなみに使われたカラー写真は、リュミエール兄弟が1907年に発明したガラス乾板によるオートクロームで、ここでもリュミエールと結びつく。

飛鳥山公園というのは初めて行ったが、意外に大きく、天気が良かったせいで人出も多かった。渋沢栄一の邸宅を公園にしたらしいが、さすが明治の経済人の個人宅はでかい。ついでに園内の「紙の博物館」にも行ったが、パネル展示を中心にしたちょっと古いタイプの博物館でがっかりした。渋沢と言えば、日本の大企業をいくつも作った人で、王子製紙もその一つらしく、もともとは王子製紙の博物館だったようだ。

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