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2010年5月10日 (月)

『フェアウェル さらば哀しみのスパイ』の不思議な魅力

1980年代初頭のソ連で、「フェアウェル事件」と呼ばれるスパイ事件があったらしいが、実は覚えていない。KGBのスパイが機密情報をフランスに流していたというもので、それをもとにした映画『フェアウェル さらば哀しみのスパイ』の試写を見た。『戦場のアリア』のクリスチャン・カリオン監督らしく、ちょっと大味なドラマだが不思議と印象に残る映画だった。

レーガンやミッテランやゴルバチョフまで登場してそれぞれ俳優が演じているが、どこかリアリティがない。あれだけメディアに出ていた人々を俳優が演じるのは、容易ではあるまい。それもあるけど、そもそも息子が将来自由を味わうために、ソ連の崩壊を期待して機密情報を流し続ける父親の動機というのが、いま一つ理解しにくい。その見返りが、自分の好きなレオ・フェレや息子の好きなクイーンの音楽テープやシャンパンをもらうこというのも、本当かなと思う。
しかしその父親を、あの監督のエミール・クストリツァが演じていて、実に存在感がある。彼のつぶれたような顔の表情一つで、その理解しがたい行動をなぜか納得してしまう。旧東欧出身だからこそ持つリアリティだろうか。彼だけにしかわからない動機というものを感じてしまう。
フランス側の相手役を演じるギョーム・カネは普通にいいが、私にはその妻役のアレクサンドラ・マリア・ララが良かった。実は『ヒトラー 最期の12日間』でのヒトラーの秘書役以来好きで、『バーダー・マインホフ』や『セントアンナの奇跡』など彼女が出ているだけで見に行った。東独生まれで8歳の時に西側に渡り、今ではフランス人と結婚しているという設定が生きている。東側の恐ろしさを知っていると思うと、実にそれらしい。それからCIA長官を演じているウィレム・デフォーも、クールな演技が光った。
役者たちの名演技が、平凡になりがちな映画をかっちりと支えて奇妙な魅力を放っている。7月公開。

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