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2010年5月 8日 (土)

「オリエンタリズム」の大作2本

『オリエンタリズム』のエドワード・サイードが生きていたらきっと苦笑したような大作を2本見た。1本は7月3日公開のリュック・ベッソン監督の『アデル』、もう1本は5月28日公開のディズニー製作『プリンス・オブ・ペルシャ』。比べると出来は後者の方がいいが、あいかわらず西洋が東洋を自分勝手にイメージしたような大作だ。

『アデル』は、20世紀初頭のパリが舞台で、病気の娘の命を救うために、エジプトからミイラを持ってくる話だ。全体がコミカルで子供向けの演出だし、ストーリーもたわいないが、魅力がないわけではない。あちこちにCGを使っているが、異国情緒のエジプトのシーンに比べて当時のパリがなかなかよく再現されているし(リヴォリ通りなど今のパリとの比較も楽しい)、ルーヴル美術館の何体ものミイラが動き出すシーンはかなりおかしい。主演のアデルを演じるルイーズ・ブルゴワンという女優が、何とも自然な感じで好感が持てる。

『プリンス・オブ・ペルシャ』は、オリエンタリズムとは別のところで終盤驚いた。話は、ペルシャの聖都アラムートが敵国に素晴らしい剣を供給している、という情報をペルシャ王室が握ったことから始まる。
アムラートの美しい町は破壊され、そこの王女タミーナは怒り狂う。驚くべきは映画の終りで剣の製造の事実はないことが判明し、ペルシャ王がタミーナに「武器の製造などなかった。我々の間違いだった」と謝るシーンだ。まるで最近のイラクの大量破壊兵器をめぐる話のようだ。
最近イラク戦争を反省するアメリカ映画が増えているが、ハリウッドのメジャーがここまであからさまにイラク戦争を批判しているのは見たことがない。こうしないとアメリカの大衆の支持は得られないのだろうか。いずれにしたって、ペルシャをエキゾチズムたっぷりの野蛮国として描いているのには変わりはないのだからだが。

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