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2010年5月15日 (土)

カラダに効く食事と「動的平衡」

地下鉄駅の売店で雑誌を眺めていたら、『クロワッサン』最新号が「カラダに効く、野菜と魚の食べ方」という特集だったので、買ってしまった。「免疫力を上げる食べ方を知る」とか「沖縄野菜の栄養力」とか「野菜だけをことこと煮るスープストック」とかいう文字が表紙に踊っているだけで、もう健康になった気がして買ってしまう自分が情けない。

読んでみると、中身はあまりおもしろくなかったが、途中に出てくる分子生物学者の福岡伸一氏のインタビューが異彩を放っていた。
なぜおもしろくないかというと、「フィトケミカル」で免疫力を上げるとか、植物繊維のデトックス効果とインスリン抑制とか、赤い魚の「アスキタサンチン」は強力な「カテノイド」で血糖値を下げるとか、わけのわからない言葉をたくさん使っていたから。怪しげな健康食品の宣伝のようにさえ見える。特に巻頭の大学教授と料理研究家の対談がそうだ。

それと比べて、中ほどの白黒ページの福岡伸一氏のインタビューが、ほとんど逆のことを述べていておもしろい。食べたものは瞬間ごとに体内に吸収されて古い成分が排出されており、体は毎日少しづつ入れかわっているというのが福岡氏の「動的平衡」の考えだ。その新陳代謝に最も大事なのは、毎日たんぱく質を取ることという。何だ、肉を食べていいのか。植物繊維の話なんて出てこない。風土に合ったもの、季節にあったものを食べることが次に説かれている。つまり自分の環境に近いものを食べないと体に合わないのだ。日本人にとって、オリーヴ油やワインが健康にいいのかどうかわかったものではない(とは書いていないが)。サプリメントや補助食品は全く効果がないと断言する。そして食べ物を見た時からホルモンや消化液の分泌が始まるので、なるだけ自分で作ってゆっくり食べるのが最大の健康法だと言う。「現代ではよほどのことがない限り、栄養不足にはならない」「腹八分目こそ、唯一、合理的な健康法なのです」と締めくくる。
この雑誌の前半の健康をめぐる怪しげな話をすべて否定するような、まるで「老人の知恵」のような意見だ。

それにしても、ひと月で体の中身が入れ替わるという「動的平衡」という考えは、食べるも次第でバカな自分がひと月で生まれ変われるようで嬉しい。

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