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2010年6月22日 (火)

徳永康元氏のダンディーな姿と古本屋めぐり

かつて東京日仏学院やイタリア文化会館などで無声映画や珍しい映画を見に行くと、背の高いダンディーな老紳士が一人でいるのをよく見かけた。1980年代から90年代半ばのことである。ある人から「あの人は徳永さんで、戦前にブダペストに留学したものすごいインテリだ」と聞いていた。

その徳永康元氏の本を初めて読んだ。文庫版の『ブダペストの古本屋』というエッセー集だ。略歴を見て、長年東京外語や関西外語の先生だったことを知った。そこには1940年から2年半滞在したブダペストの話や、欧州各地の古本屋をめぐる愉快な話が載せられている。徳永氏は1940年にバルトーク本人の最後の故国でのコンサートを聞きに行っている。この数日後、バルトークは米国へ行ってしまう。
戦争が激しくなって、徳永氏は1942年に日本に向けて旅立つ。東欧や中央アジアを抜けて列車で走るもので、この本では「ブダペストより帰る」という文章に描かれている。この時期によく無事に帰ることができたと思う。
この人の映画好きは年季が入っていて、それは「場末の映画館」という文章でわかる。山中貞雄の22歳の第一回作品『抱寝の長脇差』まで見ているのだから。

徳永氏は何度も見たが、一度も話す機会がなかった。ハンガリー映画について、ミクロシュ・ヤンチョーやマルタ・メサローシュなどについて話を聞きたかったと、今頃になって思う。

古本屋をめぐる楽しみは、私もかつては少し味わった。神田や早稲田などを半日歩いたり、海外に出張で行くとパリやロンドンやローマで映画の古本屋を見つけては、いつも数冊の本を買ったものだ。そんな本が何年か後で役に立ったことが何度もある。
しかしそんな古本屋巡りの楽しみも、今世紀になってからは縁遠くなった。忙しいこともあるが、それ以上にネットで古本まで手に入るようになったことが大きい。もはや古本屋巡りの楽しみはなくなったのだろうか。何だか古本屋に行きたくなってきた。

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