「NHKアーカイブス」に驚く
埼玉県川口市にある「NHKアーカイブス」を見学する機会があった。NHKで過去の番組を放映する時に「NHKアーカイブスから」という言葉があったが、そのアーカイブの中に入ることができた。一言で言うと、そのシスマチックな運営には驚くばかりだ。
場所は川口駅からバス13分と、ずいぶん不便なところだ。埼玉県が運営する「スキップ・シティ」というビル群の一角。そこに、これまでNHKが放映した番組で現存するすべてが保管されている。その数70万本。もちろん1953年にテレビが始まった時、ビデオはなく生中継だから、その頃のものはあまり残っていない。しかしニュースの一部やドキュメンタリーは16ミリで撮影されていたから残っている。あるいは重要な番組は、テレビ画面を16ミリで撮影したものが残っている。
今はすべてD3と呼ばれるデジタルテープに変換されているが、すごいのは16ミリフィルムなどの原版も残している点だ。フィルムの情報量は多いので、将来さらに高画質の媒体ができた時には役立つからだという。
これらはすべて完全にデータ化され、キーワードだけで全国のNHK放送局から検索できる。例えば誰かが死んだ時、過去の映像が欲しいと思って注文すれば、川口でリモコンに入力される。係の人がリモコンを持って保存庫に走ると、その映像がある場所が点滅し、その列が開く。テープを取りだしてリモコンを当てると、正しければ「ピー」と鳴るという仕組み。そして川口から渋谷のNHKにその画像をIP回線で送り、渋谷ではテープで受け取ることができる。
復元作業をしている部屋も見せてもらった。2人の若者が、テープのキズをデジタル画面で1つ1つ直していた。
テレビが始まる以前の映画館で上映していたニュース映像も、戦前を含めて16ミリを購入して保存している。通常、本でも映像でも保存と利用は相反することが多く、なかなかうまくいかないが、ここは完璧に機能している。
問題は、保存の媒体らしい。2インチから1インチ、3/4、VHS、デジタルテープと媒体が変わるごとに毎回変換しているが、今のD3はもうすぐ再生する機械がなくなる。ハイビジョンのD5に変換しているが、これもまた2016年以降は機械がなくなるらしい。そのうえ変換するたびに、億単位のお金がかかる。DVDのようなものに保存できそうなものだが、現在では次の保存媒体を研究中らしい。
ここまで徹底してるのは、官僚的なNHKだからという面もあるだろう。旧ソ連の映画がすべて保存されているようなものだ。民間企業ではとても無理。
ところで民放の映像は各局任せらしい。いっそのこと民放の映像も保存すればいいのにと、まだまだ空きの多い巨大な保存庫を見ながら勝手に思った。
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