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2010年6月17日 (木)

黒澤明生誕百年:その(1)

昨日の朝日新聞朝刊社会面に、1951年に黒澤明の『羅生門』で金獅子賞を取った時に本人の代わりに公式上映に参加した東洋人の写真が載っていて笑ってしまった。気になったので調べてみると、当時の朝日には受賞の速報は出ていない。

朝日がこの受賞を取り上げるのは、米、英、仏などから公開の申し込みがあって、通産省が輸出振興対策を発表してからだ。読売はAP電ですぐに速報を出しているが、数日後の筈見恒夫氏のコメントも含めて、くわしいものはない。

新聞は頼りにならないので『キネマ旬報』をめくってみると、その年の10月上旬号に見開きの特集があった。
「日本映画『羅生門』にヴェニス大賞輝く」と題したもので、主にイタリアの新聞の反応と本人のコメントが載っている。イタリアの新聞は、エキゾチックな映画として捉えている『イル・ガゼッティーノ』もあれば、『ジョルナーレ・ディ・イタリア』のように「この映画がわかるためには、日本で生まれたり、横浜で勉強する必要はない。……むしろ繊細な味わいのあるピランデルロ式の戦慄が走っている」とかなり本質に迫ったものもある。

おもしろいのは黒澤のコメント。「出来るなら、外人向けに徹底的に直すべきだった。……来年また出すかどうかは、むろんいい作品が出来なくちゃ話にならないが、もしチャンスがあったら、今度は外人に向くように、あらゆる貼に氣を配って手を入れ直してから出したいと思います」。朝日の今回の記事でも引用していた自伝に書かれているように、絶望して家の近くで魚釣りをしていて驚いた様子とはずいぶん違う。だいぶたってから書いた自伝だから、自らカッコつけたのだろうか。

黒澤の後半の『影武者』や『乱』のような映画がどうも「外人向け」のような気がするのは、『羅生門』の受賞がきっかけだったのかもしれないと思えてきた。

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