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2010年6月10日 (木)

どこか違う日本映画

『日本映画空振り大三振』を読んだせいではないが、日本映画を見ると悪口を言いたくなることが多い。
『Rookies』のように、テレビ局主導で最初からヒットをねらった作品ならば、「これは映画ではない」の一言で済む。そうではなくて、これみよがしに芸術的な高みを狙いながら、どこかで違うところに行ってしまった映画を見るのはつらい。現在公開中の『春との旅』と、7月10日公開のドキュメンタリー『ビューティフル アイランズ』を見て、そう思った。

『春との旅』は、冒頭から仲代達矢の過剰な演技に引いてしまった。そして語りすぎ、多すぎる音楽。セリフを少なくし、大事なシーンはすべて長いカットで撮っているのだが、その分を演技と音楽が仮名を振ったように解説して回る。
話はよくできている。老人と19歳の孫娘が、老人の兄弟を訪ねて回る。仲代よりもその兄弟の演技がいい。特に弟の柄本明はすごい。人生を生きるすさまじさが一瞬の動作から見えてくる。兄の大滝秀治と姉の淡島千景はいつも同じだが、なかなかの存在感だ。むしろ長兄の妻の菅井きんや服役中の弟の妻の田中裕子の方が、言葉は少ないがリアルだ。
調べてみたらこの映画は、日経で白井佳夫氏が、毎日で勝田記者が、読売で福永記者がそれぞれ絶賛していた。わからない。

『ビューティフル アイランズ』は、南太平洋のツバル、イタリアのベネチア、アラスカのシシマレフという3つの島を撮ったドキュメンタリーだ。しかし冒頭のツバルの美しい海の中に沈んだ大木を見た時から、その審美的映像が、現実の厳しさに迫るよりも、固定化した絵葉書的な世界を形作っているように思えた。
ツバルの祭やベネチアのカーニバル、アラスカのアザラシ狩り、どれもがエキゾチズムに見えてしまう。一か所(例えばツバル)に絞ったら、よかったかもしれない。そうしたら住んでいる人々の日々の厳しさが生活が、もっと見えてきただろう。
唯一行ったことがあるせいか、ベネチアの映像が最も弱く見えた。ゴンドラ、ホテル・ダニエリ、カーニバルの仮面というのは、まさに観光客にとってのベネチアでしかない。沈没の危機を日々生きているベネチアの人が見たらどう思うだろうか。
地球上の最も美しい三か所の地盤沈下問題を描き、「政治的に正しい」この映画は、新聞でどのような評価を受けるか楽しみだ。

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