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2010年7月 9日 (金)

シャガールを見直す

シャガールと言えば、空を飛ぶ恋人たちを明るい色で描くメルヘンタッチの画家という印象が強い。かつては毎年のように日本のどこかの百貨店でシャガール展が開かれていて、そうした絵画ばかり目にしてきた。だから今回またシャガール展をやると聞いてあまり気乗りはしなかったが、展覧会の副題に「ロシア・アヴァンギャルドとの出会い~交差する夢と前衛~」と書かれているのを見てちょっと気になった。実際に見てくると、これが予想を上回るおもしろさで、シャガールを見直した気分だ。

何がおもしろいかと言うと、ロシアからパリに移った頃のシャガールと同時代のロシアの前衛芸術家たちの作品が展示されていることだ。ゴンチャローワのような民衆絵画や、ラリオーノフのキュビズムの作品と並べると、シャガールのロシア的な側面が際立ってくる。特にいったんロシアに戻った1914年から20年頃までの絵画は、ピカソやマティスなどのフランスの最先端と、ロシアの前衛芸術の間を揺れているように、作品ごとに作風が違って興味深い。

展覧会の後半は、いわゆるメルヘンのシャガールで、作品の質は高いがあまりおもしろくなかった。途中にオペラ「魔笛」の舞台衣装用デッサンがあったが、あれはいらなかったのではないか。それならもっとザッキンの彫刻やカンディンスキーの絵画を増やして、前半を充実させて欲しかった。
上野の芸大美術館で10月11日まで。その後福岡市美術館に巡回。

この展覧会は、パリのポンピドゥ・センターから全出品作を借りてきている。国立新美術館の「オルセー美術館」展も国立西洋美術館の「カポディモンテ美術館展」もそうだが、海外の一つの美術館に借料を払って借りてくる展覧会は苦労が少ない。しかし美術館の企画展というのは、数多くの美術館から一つ一つ作品を借りてくるのが基本だろう。これでは美術館の仕事を放棄していると言われかねない。
この展覧会がおもしろかったのは、ロシア美術との組み合わせであって、去年の「ルノワール展」や25日まで開催中の「マネ展」で味わったような、画家の全体像を見る充実感からはほど遠いことは指摘しておきたい。

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