フランス映画らしさとは
最近、フランス映画らしさとは何かと考えるような2本を見た。10月9日公開の『冬の小鳥』はフランスと韓国の合作で、韓国の監督が全編韓国で撮影しているにもかかわらず、どこかフランス映画のようなタッチだ。11月6日公開の『100歳の少年と12通の手紙』は、フランス映画とは思えないほどファンタジックな演出が際立つ。
『冬の小鳥』は、父親に捨てられ、ソウル郊外のカトリック系児童養護施設に入れられた少女ジニの日々を丹念に描く。監督のウニー・ルコント自身が韓国生まれの女性で、9歳の時にフランスの家庭に養女として引き取られて育ったというから、自伝的な内容だ。
最初はジニの悲しい日常が淡々と描かれるが、親友がアメリカ人に引き取られたあたりから、目が離せなくなる。人形を手当たり次第に引きちぎったり、庭に穴を掘って自らを埋葬したり。とても演技とは思えないほどリアルだ。1970年代の貧しい韓国社会の再現もすばらしい。このような細部にこだわるリアリズム精神は、最近の韓国映画にはあまりない。むしろ、ヌーヴェルヴァーグ以降のフランス映画の大きな伝統を引き継いでいるようだ。この監督の次回作が待ち遠しい。
『100歳の少年と12通の手紙』は、12日後の死を宣告された少年オスカーが、元プロレスラーで今はピザの宅配をやっているおばさんのローズと仲良くなり、最後の日々を一緒に過ごすという物語。その過ごし方が半端ではない。ローズがプロレスラー時代の試合の話をすると、その場面が蘇る。ほとんどシュールでばかばかしい映像は、フランス映画とは思えないほどよくできている。
オスカーは残された日々を1日で10年が過ぎると考えて、どんどん年をとってゆく。見た目は変わらないのだが、病院内で結婚したり浮気をしたりしているうちに、精神的には本当に成熟してゆく。毎日神様に書く手紙がいい。ありえない話だが、最後までぐいぐい引っ張ってゆく。
最近のフランス映画も変わったと思った。9月4日公開の『ミックマック』もそうだが、感情をリアリズムで描くのではなく、あくまでファンタジーで作り込むタイプの映画が時おり出てくる。
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