学会という不思議な存在
大学の教師になって、主な仕事は教育と研究と言われた。教育は授業が中心だからまだわかりやすいが、研究というのは正直よくわからない。発光ダイオードの研究ならその意義もわかるけど、「○○という作家における××の影響」などという研究に何の意味があるのか、あまりよくわからない。もっとわからないのが、専門分野の研究活動を推進する団体として存在する「学会」というものだ。
私は以前からA学会に所属していたが、見栄で入っていたようなもので、全くの幽霊会員だった。教師になって友人から勧められてもう1つ、B学会の会員にもなった。会員になるということは会費を払うということで、年に5千円とか1万円とか払う。それだけのお金を払って、年に一度の大会に出ると、A学会の場合別途大会参加費5千円が必要だ。
大会の発表はおおむね、大学院の博士課程の学生や非常勤講師などの若い人が多い。おもしろいものもあるが、自分がよく知らない分野だと、聞いても全くわからない。それを2日間聞く。正直なところ、お金をもらいたいくらいだと思った。
大会以外には、論文満載の学会誌が年に何度か送られてきたり、会報が送られてきたり。自分などはパラっとめくって終わりで、350円の『週刊文春』の方がよっぽど時間がつぶれる。
そのうえ、今度からA学会で役職につかされることになった。そうなるとその会議に出ないといけない。これまた無報酬で何時間もやる。驚いたのは、多くの先生が真剣に討議していることだ。
若手の研究者にとっては学会は重要だと思う。発表をして論文を書いて実績を積み、将来のポストをめざすステップになるからだ。我々中年教師はその手助けをすべきということなのだろう。もちろん自分も論文を発表すればいいのだが、同じ書くなら普通の雑誌とかもっと読者の多い方がいいと思ってしまう。
考えてみたら、大学も「教務委員」とかいろいろな委員会があって、やたらに会議が多い。無報酬でよくやると思う。学会も大学もその中に入って1年とちょっとたつが、長らく資本主義社会の住民だった自分はまだまだ「不思議な国のアリス」状態だ。
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