原節子の生き方と貴田庄氏の書きぶりの爽やかさ
貴田庄氏の書き下ろし『原節子 あるがままに生きて』を読んで、その爽やかな読後感を楽しんだ。欲がなく、まさに「あるがままに生きて」きた原節子を描く貴田氏のタッチも気負いがなく、原節子の生涯を淡々と伝えてゆく。
貴田氏は愚直に一本一本彼女の出た映画を取り上げて、その周辺の記事やインタビューを押さえる方法で進めるが、驚いたのはこんなに彼女が出た映画があったのだということだ。100本を超すというからすごい。特に戦前に出た映画では、山中貞雄の『河内山宗俊』と日独合作の『新しい土』くらいしか思いつかない自分が恥ずかしい。戦前では大根役者という評判が定着していたことも知らなかった。
原節子は、いくつかの規則を持っていた。ラブシーンをしない、水着を撮らせない、舞台挨拶に出ない、等。そうしてそれらを守ったという。好きなものは「まず読書、次が泣くこと、その次がビール、それから怠けること」。
貴田氏のおもしろいところは、可能な限り映画を見て、自分の判断を下すことだ。当時傑作と言われた『安城家の舞踏会』を「今この映画を見て、傑作と思う人がいるでしょうか。あまりいないように思います」。小津に出会う前の原節子の作品は「もう一度見たいと思える作品は少ないといってよいでしょう」。
原節子はもはや今年で90歳。42歳で引退してからの方が長い。今はどこにどうしているのか。貴田氏は「わからなくて幸いです」と書く。
そんなに遠くないある時、突然その死がマスコミをにぎわすのだろう。
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