「新聞の映画評」評:『モダン・ライフ』
今日の夕刊各紙にはまた新しい映画評が揃うので、その前にぜひ書いておきたい。先週末に公開された『モダン・ライフ』の扱いについてだ。私の見たところ、大きなスペースを割いた映画評を載せた新聞は一つもなかった。何という見識のなさだろうか。
レイモン・ドゥパルドンは、マグナムに属する写真家としても有名だが、映画監督としても新作を作ればほぼ間違いなくカンヌに出品されるクラスの巨匠だ。その独自の対象へのアプローチは、同じドキュメンタリーでもフレデリック・ワイズマンのクールな手法とは対照的だが、いつも映画言語を揺さぶるような作品を作ってきた。その彼の作品が日本で初めて劇場公開されるというのに、この扱いは何だろうか。
読売と朝日には前の週にインタビューが載った。ともにパリ支局からの記事で、これは両紙の見識と言うよりは、むしろ配給会社の作戦に乗ったというところだろう。映画評は朝日は載らず、読売と日経が前日に、毎日が前週に20行たらずの評を載せた。日経は村山匡一郎氏が4つ星をつけているにもかかわらず。読売はほめてはいるが、毎日は「分かりやすさを求める向きには退屈かもしれない」などと書いている。
読売や毎日に大きく載った『ボローニャの夕暮れ』はおもしろい映画だが、監督のプーピ・アヴァーティは、イタリアでも最も保守的な作風で知られ、国際的な評価はドゥパルドンとは比較にならない。ほかにも『ザ・ロード』や『イエロー・ハンカチーフ』などそれなりの映画が大きく紹介されているが、『モダン・ライフ』ほどの新鮮な刺激を持った映画だろうか。
最近、カンヌやベルリンなどで賞を取ったり話題になった作品でも、日本公開されない場合が増えた。それはいくつもの配給会社が潰れたり買収されたりしたことや、日本人の邦画志向などが原因だが、その根底に国際的な水準を理解できない日本の映画ジャーナリズムの問題があるような気がしてきた。
まだ見ていない方は、『モダン・ライフ』を是非見て欲しい。今公開されている映画の中で最も新しい映画だと思うので。
同じように新しい映像言語を切り開いているペドロ・コスタの新作『何も変えてはならない』が7月末に公開されるが、この扱いはどうなるのだろうか。
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