なぜかドイツの現代小説を読む
ふだんは外国の現代小説は読まない。突然、ヴィルヘルム・ゲナツィーノというドイツの作家の『そんな日の雨傘に』を読んだのは、その帯に書かれた「46歳、無職、つい最近、彼女に捨てられた。どこにも居場所がない……」という文句に妙に惹かれたからだ。読んでみると、当たりだった。
無職の男が当てもなく街を歩く。世の中や人々を眺めながら、頭に浮かぶことを次々につぶやく。出会う同世代の醜い女たちと次々に寝る。物語はそれだけだが、彼の抱く妄想が何ともおもしろい。
彼は上着の折り返しに小さなプレートをつけようかと思う。「子供の頃の話題を禁ず」と書かれたプレートを。
臨終の時には、2人の「臨終の乳房コンパニオン」に付き添ってもらいたいと思う。ベッドの左右に上半身ヌードの女がいて、いくらでも胸を触らせてくれるのだ。
私が知る人すべてに<沈黙時間表>を送ろうかと思う。その表には私がいつ喋りたいか、いつ喋りたくないかが正確に書かれている。沈黙時間表を守らない者は、私とまったく喋ることができない。
レギーネと交わった後、彼女は言う。「気がついた? わたしの乳房、もう立たなくなっちゃった」。
16のとき、看護婦や女性秘書や女性美容師について考えた箴言を思いうかべる。「バカはセックスがうまい」。
問題は、レストランをほとんど知らないことだ。
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