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2010年8月19日 (木)

今年の邦画ナンバーワン決定!

とんでもないものを見てしまった。瀬々敬久監督の4時間38分の『ヘヴンズストーリー』のことである。長いから良いというのではない。今年の邦画でこれほど映画を見る楽しさそのものを見せつけた作品はないだろう。邦画ナンバーワンが決まった気がする。

まず風景がいい。最初の森の中に大勢の人がいるロングのショットではまってしまう。森に囲まれたかつての炭鉱住宅や海に面したアパートや船の着く港の何と美しいことか。そのほか桜のシーンや緑に囲まれたシーンなど、日本にもこんなに映画らしい風景が残っていたなんてと嬉しくなってしまう。おそらく日本中を探しまわって選んだのではないだろうか。クリスマスのイルミネーションでさえも、たぶん十か所以上を組み合わせて、幻想の世界を作り出している。

そして登場人物がいい。中心をなすトモキとミツオ役の男優(長谷川朝晴と忍成修吾)がよく、サト(寉岡萌希)やタエ(菜葉菜)の女性陣も充実している。その脇を固めるのが佐藤浩市、柄本明、嶋田久作といったベテランだ。人形作家を演じる山崎ハコも明らかに俳優とは異質の存在感を示す。長回しのカメラは彼らを遠景からじっと撮ったり、動きを手持ちカメラで追いかけたりするかとかと思うと、表情のクローズアップをじっくりと惜しげもなく見せる。

物語は、20人以上の登場人物が複数の殺人事件でからみあい、10年間の間に変わってゆくさまを描いたもの。生きること、殺すこと、愛すること、憎むことといった人間の根源的な感情が激しくほとばしり、もつれ合う。最後は次第に生死を越えた仏教的な世界にたどりつく。溢れ出る感情を4時間38分という時間が純化してゆき、見終わると自分が別の存在になった気がした。こんな映画は久しく見ていない。

若干後半がくどい感じもするが、長さそのものがこの映画のテーマの一つだからしょうがないかもしれない。この映画はスクリーンで見ないとその良さが半分もわからないだろう。
10月公開。

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