楽天やユニクロの英語公用化を笑う
雑誌『アエラ』のコラムに「ぐっちーさんのここだけの話」というのがある。投資会社でM&Aなどを手がける人の匿名コラムだが、世の常識を皮肉るのでおもしろい。今回ヤリ玉に上がったのは、楽天やユニクロの英語公用化だ。
彼はまず、「ドメスティックな企業だからこそ決断できた」と馬鹿にし、「トヨタ自動車やキャノンなどの企業経営者は唖然としているのでは」と書く。次いで彼自身が15年務めた米国の投資会社の日本支店でも、日本人同士は日本語で話していた経験を語る。
結論はこうだ。「母国語と思考回路は深く結び付いており、その結びつきこそが文化の源なのです。日本人同士が集まって日本語を使わず、英語で話している姿は滑稽を超えて、もはや冗談にしか見えません」。
当たり前の話だ。ところが楽天やユニクロの今回の話を批判する文章はこれまで読んだことがない。それよりむしろ、最近の大学などでの会話では「今後は英語をしゃべらないと」という例によく挙げられる。
私自身、最初はほとんどの社員が英語ができる職場にいたが、もちろん会話はすべて日本語だった。その後実際に外国と仕事をしてわかったのは、「中身があれば言葉は後からついてくる」という単純なことだ。
そんなことを考えていたら今朝の朝日新聞に三船敏郎の娘、三船美佳が6歳の娘をバイリンガルに育てている話が載っていた。題して「身近にネーティブの存在を」。「日本の学校も、もっと英語教育に力を入れないと、ますます取り残される」とか「一刻も早く義務教育で、しっかりと英語を教えて欲しい」とか述べている。こういうものを読むと、世のお母さんたちは影響を受けるのだろうと思うと本当にがっかりする。
日本の会社内の言葉を英語にしたり、小学校から英語を勉強したりというのが、何にも役に立たず、むしろ害の方が多いのは、実際に海外と仕事をしている大半の人々が感じることだと思うのだが。
そんな時間があれば、とにかく日本語の本を読むことだ。
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コメント
英語に距離を置く人に薦めたい本が、黒田龍之助『世界の言語入門』(講談社現代新書、2008年)です。
投稿: マサユキ | 2010年8月26日 (木) 07時54分
正しい日本語すら使えずコミュニケーションもとれないのに英語でコミュニケーション取る資格などない
投稿: | 2011年1月12日 (水) 21時39分