『悪人』と消えゆく言語
映画『悪人』を見て一番考えたのは、博多弁と佐賀弁と長崎弁の違いだった。福岡出身で親戚や友人が九州各地にいる私にとっては、その差異は重要だ。主演の妻夫木聡が福岡、深津絵里が大分出身なのを始めとして、出演俳優には九州出身者が多かったせいか、その違いに敏感な映画だったと思う。そんな時、最新の『クーリエ・ジャポン』誌を読んでいたら、「世界では約2,500の言語が消滅の危機にさらされている」という記事があった。
フランスでは52の少数言語が危機だという。えっ、そんなにあったのと驚いた。フランス本土が26、海外県が26という。もともとフランスは17世紀にアカデミー・フランセーズを作って以来、統一言語を欧州で最も早く導入した国であり、今でも旅行してみてイタリアやイギリスに比べて方言が少ないと感じるが。
そこにはそれ以上の細かい情報はなかったので、その記事のもとになっているユネスコのホームページを見てみた。昨年2月の調査結果だ。そこには世界地図があって、国名を入れるとその国の地図に消えつつある言語がマークされる。フランスで見てみると、「ブルトン語」「プロヴァンス語」などはそうかなと思うが、「ピカール語」「ノルマンディー語」「リモザン語」「ブルゴーニュ語」など確かに26も書かれている。これは「言語」ではなくて「方言」だろうと思ったが、とにかくそう書かれている。
そうしたら日本は各県に言語があるではないかと思って、日本を調べてみた。すると消滅の危機にある言語は8つ。まず誰もが想像がつくのは「アイヌ語」と「沖縄語」。それ以外はすべて南の島で、「八丈島語」「奄美語」「宮古語」など6つあった。私はこれらの島に行ったこともなく、言葉が違うかどうかももちろんわからない。しかし例えば佐賀弁は消滅の危機にないのだろうかと思わず考えてしまった。ユネスコはつい最近まで日本人がトップにいた機関だから、日本の調査がいい加減ということはないだろうが。
『悪人』に話を戻すと、深津絵里が何度か口にする「どがんすると」(どうしようか)という言葉は、佐賀、長崎の言葉で、福岡では「どげんすると」だと思う。これは書きだすときりがないので、ここでやめます。
ちなみに映画は実におもしろかった。李相日監督の俳優の動かし方が天才的だと思った。『ヘヴンズスト―リー』の重層的な「悪人たち」を見た後では、ちょっと軽い感じはしたけれど。
| 固定リンク
「日記・コラム・つぶやき」カテゴリの記事
- なぜかイタリア映画の専門家に(2026.08.07)
- 高い、暑い(2026.07.28)
- 酒を飲む量が減ったが(2026.07.19)
- 突然耳が悪くなる(2026.07.17)
- 日本年金機構に行く(2026.07.05)
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- うんざりしながら読む新書:その(1)(2026.08.01)
- 『実録!東映三角マーク宣伝部』を読む(2026.07.13)
- 『映画監督 崔洋一 映画は闘争だ!』を読む:続き(2026.07.03)
- 辻仁成からレーモン・オリヴィエへ(2026.06.17)
- 金子修介『無能助監督日記』を読む(2026.06.05)
「映画」カテゴリの記事
- なぜかイタリア映画の専門家に(2026.08.07)
- 『プライベート・ケース』のフランス映画らしさ(2026.08.05)
- 『海辺の一日』に息を飲む(2026.07.30)
- 「出光真子」展に行かねばならない(2026.07.26)
- 『八つ墓村』をめぐって(2026.07.24)


コメント