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2010年9月18日 (土)

上村松園の美人画

外国から帰ってきて最初に見た美術展は、竹橋の近代美術館で始まったばかりの『上村松園展』。別に日本美が恋しくなったわけではないが、自宅から遠くないところで日本のものを見たいと思った。その完璧な美人画は、異様なくらいのインパクトがあった。

とにかく美人しか描いていない。風景も静物も生物もなく、美人だけが次々と出てくる。そのうえ、全員が着物を着ている、それも日常的な着こなしではなく、いかにも高級な着物を優雅に着こなしている。かといって型通りと言うのでもない。一枚、一枚が指先や髪の毛、着物の端に至るまで細かく描き込んでいて、リアルなのだ。
あえて言えば、人間の感情が伝わってこないという不満はあるかもしれない。苦労を知らず、何不自由なく育った美女のように、内に籠った感情が感じられない。
唯一、<熖>(1918年)という絵だけが、垂らした髪を口に挟み、恨みいっぱいに振り返った女の姿を描いていて、異彩を放っている。会場でもこの絵のまわりが一番人が多かった。この展覧会は10月17日までだが、この絵は9月26日までの展示なので、それまでに見ておいた方がいいと思う。
展覧会は竹橋の後、京都に巡回する。

明治8年生まれの彼女は、終戦の年に70歳。この人の絵には戦争の影も戦後の混乱も一切ない。1949年に亡くなるまで美人画を描き続けている。ひとつの奇跡だ。

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